6DJ8シングル・ミニワッター

Ver.01 2014/4/30

ぺるけさん著『真空管アンプの素』に記載されている6DJ8シングル・ミニワッターを作成しました。

回路はお手本どおりで、トランス類は推奨品としました。また、シャーシは唐松合板の板きれを使い安価に仕上げました。そのうちトランスカバーを付けるつもりです。

6DJ8はファミリーが多い真空管とのことです。今回は、たまたま、オークションで入手できた6922を使用しました。Philips製です。何年ごろの製品でしょうか。

出力が0.3Wのアンプですが、音量の不足は感じません。ぺるけさんが、webページ『ミニワッター直結シングル・アンプ』の記事のなかで6DJ8/6922はパワーが出ないのにスケール感のあるバランスの良い鳴りっぷりにちょっと驚きました。」と書かれていました。なるほど、なるほど。。。

歌詞が良く分かります、プリアンプでバスブーストするとさらに心地がよい。作って満足、聞いてみてさらに満足、お薦めです。

 


測定

これまではテスターのみでアンプを製作しておりました。先日、思い切って、デジタル・マルチ・メータ(Advantest R6441B低周波発振器(KENWOOD AG-203D)を、中古ですが購入しました。今回の製作の目的のひとつは『測定』です。

Advantest R6441B    http://www.kdd1.com/keiki/009/AG-203D1.jpg 

(写真は新品です。購入品は中古なので特にDMMは使用感たっぷりです。)

 

正確に測定できたのか? 間違いは無いのか? 物差しが無いので判断が難しいのですが、真空管アンプの素』に記載されている利得値や特性グラフをお手本として、測定結果が類似していれば『良し』としました。

 

それから、歪み率は efu さんの有名なフリー・ソフト「WaveSpectra」で測定してみました。 efu さんに多謝です。

 


製作

シャーシーは、近所のホームセンターでカラマツ合板8mm*240m*450mm250円で売られおり、これを使うことにしました。カット代込みでもワンコインでお釣りがきました。カット誤差は1mmほどありましたが、補正可能な範囲でした。天板、底板、前板、後板に使います。横板までは、取れませんでした。

唐松合板は安い割には木目が綺麗で気に入りました。

穴開けは、ドリルとミニのこぎり、彫刻刀を使い、自力であけました。トランスの穴開けがちょっと大変でしたが、その他は薄い合板なので、すいすい。

塗装は、「PASTE WOOD STAIN #1400」。4回から5回くらい日を置いて重ね塗りをしました。布に着けてこするだけ、刷毛は不要。匂はありません。初めて使いましたが、良い感じに仕上がったと思います。

真空管ソケット、ボリューム、電源SWは、1mm厚のアルミ板をカットし、これを補助板として天板に取り付けました。浮いた金属があってはならないとの教えから、これらアルミ板は、全てアースに接続してあります。

 

 

 

 

パーツはラグ端子に取りつけました。    

 

出力トランスは推奨品のなかから東栄変成器のT1200を選びました。電源トランスは指定の春日無線のKmB90Fです。

*       トランス選びへ(出力トランス選びは楽しかったので、集めたWeb情報をまとめておきました。) 

 

DSCN0241

 

 


総合特性

総合特性は、以下のようになりました。R-chL-chの差異は、真空管を左右chで入れ替えて測定したところ値が反転したことから、真空管の個体差が主要因と思われます。また、最大出力がお手本と比べかなり低めになっています。理由のひとつは総合利得(無帰還)が低かったため負帰還量が少なくなり、歪み率がその分下がらなかったことがあるかと想定しましたが、それだけで、ここまで差異が出ることにはなりません。他にも要因があるはずですが、不明です。

これらの差異はありますが、概ねお手本と類似した特性となりました。

 

 

1:“お手本値(参考)”は、真空管アンプの素(228頁と310)に記載されている値です。

2:利得、負帰還量の実測値は、1KHz、出力電圧(8Ω負荷)≒200mV時の値です。

3:残留雑音は、出力トランスの1次側の電圧値から換算した値です。

4:ダンピング・ファクタの実測値は、1KHz、出力電圧(無負荷)≒250mV時の値です。

 


各測定の詳細

覚え書きとして、各測定の詳細を記録しておきました。なにやら、量が多くなったので、別頁としています。

*  総合利得と負帰還量

*  歪み率   

*  残留雑音  

*  周波数特性

*  ダンピング・ファクタ

*  クロストーク

*  測定冶具

*  失敗

 

 

 


おしまい

半田ごてを握っていた期間の10倍以上は『測定』に費やして、たっぷりと楽しみました。生まれて初めての周波数特性の測定や歪み率の測定でしたが、クロストークの測定を除いてそれなりに測定できたようでうれしかったです。今まで、デジタル・マルチ・メータは、(ちょっとした憧れもあってか?)0.01mVまで正確に測定できて測定は簡単などと思いこんでいた素人でしたが、少しは進歩したようです。分からないことも残ってしまいましたが、そのうちに氷解するかと思います。

以下、反省をこめて、

*  無理をしても新品を購入すれば良かった。

*  日時、測定回路、測定ポイント、測定条件(周波数、信号レベル、左右CH、真空管の識別)等、きっちり、記録する。

*  日をおいて3回くらい測定すると、様子がみえてくるようですが、1回でやめてしまったほうが幸せだったかも。

*  測定値がぴったり動かないと気分がいい。再測定して、値が同じだとさらに気分がいい、けど、毎回そうはいかない。

*  ある程度振れ幅や振れ方があるかと思いますが、その感覚や理由がまだ掴めない。

*  信号電圧は低からず、高からず。

*  線にも抵抗がある。

*  周波数特性のように周波数を変化させながら測定する際は、最初から終わりまで一定の微細な間隔で無くとも良いみたい。必要に応じて細かくしていくコツがあるようです。

*  リード端子はしっかり接続する。ミノ虫クリップは便利ですけど、噛み方しだいでダンピング・ファクタが変わりました。

*  隣りあったB+端子とアース端子をリード端子(ミノ虫クリップ)でショートさせてしまい、FETを破壊してしまいました。 慎重にゆっくりと。

*  例えばプレートやグリッド等の測定個所は、DMMのリード端子を容易&安全に接続、固定させることができる実装を考える。ICクリップは掴める範囲が限定される。

*  負帰還をかける前の利得の測定が容易にできる実装を考える。

*  測定値がふらついてもめげない。何か、理由があるはず。ふらついたら、まぁ、その日は、別なことをしよう。

*  測定冶具の製作は回り道のようですが、測定冶具があると確実に測定時間が短縮します。また、正確さが増すように思えます。

 

 


参考書籍、参考ホームページ

¬  木村哲(ぺるけさん)著 『真空管アンプの素』 技術評論社

¬  ぺるけさん 『1W以下のミニパワーアンプの魅力 Mini Wattaers』、オーディオ計測器 Measuring Instruments for Audio』のページ他


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