デジタル・マルチ・メータ(Advantest R6441B)で、入力ショート時のSP端子間の交流電圧を計測してみましたが、DMMの電圧表示が0.00mVとなって、うまく測定できませんでした。(このDMMの性能では、あたりまえですよね。つい先日まで、0.01mVを狂いなく測定できると思ってました。)そこで、『真空管アンプの素』の 159 頁の記事を参考に雑音歪み率から残留雑音を求めてみました。また、別な求め方として、トランスの一次電圧から残留雑音を求めてみました。
『真空管アンプの素』の 159 頁の記事によれば、雑音歪み率曲線の右肩下がりの部分は雑音の大きさを表しているそうです。入力信号を小さくしていけば、歪み(total harmonic distortion)もどんどん小さくなる、一方、雑音は入力信号が小さくなっても変わらないので、この右肩下がりの部分の主成分は、もっぱら雑音(noise)なのだそうです。
L-ch の測定データで見ると、雑音歪み(THD+N)率は、出力21mV/0.00006W(10KHz)で 0.38% でした。 この21mV の0.38% の電圧がほとんど全て雑音とすると、雑音電圧は、0.08mV≒21mV*0.38% となります。
数式で表現すると、
出力電圧*雑音歪み(THD+N)率=雑音歪み(THD+N)電圧 ・・・ @
下表は、THD+Nが右肩下がりになる信号領域でのL-CHの雑音歪み率の測定データに、@式で計算した雑音歪み(THD+N)電圧の値を追加した表です。
この表を全ての出力電圧について完成させて、@式の雑音歪み(THD+N)電圧を縦軸にとったグラフを作成してみました。出力電圧が低い部分では水平線となりました。入力信号のレベルに依存せず一定の電圧となっています。なるほど、これが「雑音」ですね。
下記グラフは、水平線の部分のハイライトです。水平部分の電圧値は、L-CHは、10KHzで0.08mV、R-CHは1KHzで0.11mVでした。周波数毎に電圧が異なる理由は、歪み率の測定では帯域幅を持って測定するそうですが、このことが理由なのでしょうか? また、ハムによる100Hzの電圧が最も高いかと単純に思いましたが違いました。
雑音電圧が低くてSP端子(出力トランスの2次側)では測定できません。それならば、出力トランスの1次側の電圧から雑音電圧が計算できるのではないか、と思いつきました。出力トランスの1次側インピーダンスが7KΩ、2次側が8Ωなので、1次側には2次側の約30倍=√(7KΩ/8Ω) の交流電圧が出ているはずで、仮に2次側が0.1mVなら1次側は3mVのはずです。出力トランスの1次側(プレート)はインピーダンスが高いので電圧測定には注意が必要だそうですが、DMMの内部抵抗が1MΩなので、まぁ、良いかとして、実測してみました。
まず、準備として、出力トランスの昇圧比(=2次側信号電圧/1次側信号電圧)を測定しました。測定周波数は1KHz、測定2次側電圧が、10mV、250mV、1000mVの3点です。左右両CHで測定しました。10mVのときは低めの値となり、250mVと1000mVでは、ほぼ同じ昇圧比となりました。L-CHとR-CHの測定結果は同じでした。今回の残留雑音計測では、微小電圧が対象なので、10mVのときの値である0.030倍を採用します。
入力をショートして、1次側の交流電圧を測定しました。DMMの表示が3mVから4mVとなりました。このくらいの電圧値であれば、DMMもそれなりの確度で使える数字かと思います。また、表示値が結構ふらつきましたので、最大値、最小値を記録しました。昇圧比から計算した結果、2次の換算電圧値は、L-CHが0.08mV〜0.11mV、R-CHが0.11mV〜0.12mVとなりました。
雑音歪み率から計算した残留雑音値と比べると若干高めですが、ほぼ同じ値でした。
歪み率の測定と同じ計測構成でアンプの入力をショートさせたときのWaveSpectraのSpectrum画面です。50Hzとその倍音の周波数に山々があります。これらは、ヒータ・ハムかと思います。一見すると、150Hzの山は100Hzの山より高く裾野は狭いです。また、400Hz、500Hz・・・には山がありません。不思議な感じです。そして、10KHz、20KHzあたりにも山がありました。ここらあたりの雑音は何が原因なのでしょうか?
参考)WaveSpectraへの入力をショートしたときのSpectrum画面も観測しました。山はほとんどないです。
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