結局のところ、疑問の残る測定となりました。以下は、忘備録的な記録です。
苦労した最大の理由は、−80dBを超える測定となったためです。1Vの−80dBは、0.1mVです。とても小さな電圧です。そこで、出力電圧を増加させて測定するとしても、本機の最大出力(R-ch、歪み率5%)は、0.27W/1460mVです。この1460mVまで出力を増やしても、−80dBの電圧は、0.15mVにしかなりません。
この微小電圧を測定させたいデジタル・マルチ・メータ Advantest R6441B の確度仕様は、測定レンジの5%以上の入力が条件であり、「0.03mV」という微小電圧の確度は保証していません。200mVレンジの5%は10mVなので、このままでは−40dB程度が測定限界になります。(確度仕様の読み間違えならいいですけど)
もうひとつ、苦労したというか、失敗がありました。最初に測定した際は、−80dBは満たしていたのですが、しばらく期間をおいてから再測定したところ、−50dBになっていました。悩みました。理由は、アンプ自身では無く、測定冶具として製作したダミーロードのボックスにありました。
あきらめようかと思いましたが、なんとか測れないかと、3つの手法を試してみました。
@ 出力トランスの1次側で測定
A DMMの表示を補正した測定(参考データ)
B WaveSpectraを使用した測定
SP端子=出力トランスの2次側の電圧E2は小さすぎて測定できません。SP端子=出力トランスの2次側端子の電圧が駄目なら、出力トランスの1次側ではどうだろうか、と思いつきました。1次側の電圧は2次側の約30倍(=√(7KΩ/8Ω) の電圧となります。0.15mVの30倍なら4.5mVです。ただ、この方法ですと、出力トランスによるクロストークへの影響は計測できません。
@L-CHからR-CHへのクロストークを測定(グラフでは、“L-CH→R-CH”と記している)
© 両-CHとも、8Ωのダミーロードを接続
© R-CHは入力をショート
© L-CHには出力電圧が1460mVになる周波数1KHzの信号を低周波発振器で与える。以降、この入力電圧値は固定する。
© 各周波数毎に、L-CH、R-CHの出力トランスの1次側の両端(BとP)電圧E1を測定。
© クロストーク値=20*LOG10(E1(R-CH)/E1(L-CH)) で計算
© エクセルでグラフ化
A同様にR-CHからR-CHへのクロストークを測定
グラフの点線は、お手本とさせていただいた特性で、出典元は、ぺるけさんのWEB頁『Mini Watters シングルミニワッター・チューニング・ガイド』のグラフです。
© 全体的な傾向は、お手本とほぼ同じ特性の傾向となりました。
© 本機の最大出力1460mV(歪み率5%)で、入力をショートしたチャネルの出力トランス1次側電圧は4mVそこそこでした。
© DMMの電圧値がふらつきました。特に、入力をショートしたチャネルの出力トランス1次側電圧のふらつきが大きかったです。そこで最小値と最大値の平均を実測値としました。
© 周波数毎に測定個所を左右CHで切り替える際、測定個所である出力菅ソケットのプレート周りが狭くDMMのリード端子を接続させるのに神経を使います、また、測定値がふらついたため時間がかかりました。この2点から、測定した周波数は15ヶとちょっと少ないです。
© LCH→R-CHのほうが若干値が良くありません。中域で2dB、高域と低域で1dBほどの差異がでました。
© 中域でお手本より4dBほどの悪化ですが、80dBとなっています。
© 高域が、お手本と大きく違います。理由は不明です。
SP端子間の電圧測定は、微小電圧の測定になるのであきらめようかと思いましたが、電圧を落していくとDMMの表示値も小さくなり、最後に「0.01mV」の表示になりました。そこで、微小電圧を測定した際のAdvantest R6441Bの表示値について実験してみたところ、真値と表示値の間にそこそこの誤差で一定の関係が成り立つという結果を得ました。また、測定できそうな最低電圧は0.1mV程度でした。
(この顛末は、「デジタル・マルチ・メータの低い交流電圧の測定実験(Advantest R6441B)」にまとめました。)
この実験結果から、あくまでも参考ということですが、DMMの表示値を補正しつつ、クロストーク特性を調べてみました。
測定手順
L-CHからR-CHへのクロストークを測定(グラフでは、“L-CH→R-CH”と記している)
© 両-CHとも、8Ωのダミーロードを接続
© R-CHは入力をショート
© L-CHには出力電圧が1460mVになる周波数1KHzの信号を低周波発振器で与える。以降、この入力電圧値は固定する。
© 各周波数毎に、両CHのSP端子の電圧E2を測定。
© E2のDMMの表示値が5mV以下の場合は、表示値を補正
© クロストーク値=20*LOG10(E2(R-CH)/E2(L-CH)) で計算
© エクセルでグラフ化
A同様にR-CHからR-CHへのクロストークを測定
グラフの点線は、お手本とさせていただいた特性で、出典元は、ぺるけさんのWEB頁『Mini Watters シングルミニワッター・チューニング・ガイド』のグラフです。
© 全体的な傾向は、お手本とほぼ同じ特性の傾向となりました。
© LCH→R-CHのほうが若干値が良くありません。3dBほど悪化です。
© 高域が、お手本と大きく違います。理由は不明です。
© 中域は−80dBを切っていますが、DMMの測定限界を超えているので、信頼性はどうかと思います。
何度か測定しました。そのうちの2回のデータを比較してみます。ほぼ、−80dB以上では類似した曲線となりました。他も同様でした。
出力トランスの1次側での測定とDMMの表示電圧を補正した測定とで、比較してみました。後者は参考なのですが、もう少しマッチして欲しかったです。
第3のクロストークの測定方法として、WaveSpectra を使った方法を実験してみました。WaveSpectraは、機能が沢山ありますが、『リードアウト機能』を使いました。接続構成やPCの設定、WaveSpectra・WaveGeneの設定は、歪み率の測定と同じです。
まず、左右のチャネルとも信号未入力(入力ショート)の状態で、L-chの800.1Hzの波形を「リードアウト機能」で測定したところ、「-144.31dB」でした。
続いて、R-CHに800.1Hzの信号をWaveGeneより与えました。L-CHは、入力ショートのままです。
このとき800.1Hzの出力波形は
・R-CHは、−5.00dB
・L-CHは、−90.18dB
でした。
従って、L-CHは、R-CHに出力信号が-5.00dBとなる信号が入力されたことにより、「-144.31dB」だった波形が「−90.18dB」になった、と想定できます。
このことから、クロストーク値は、単純に引き算して、「−85.18dB」になるのかと思います。
うまくいくと思われましたが、測定精度が悪すぎます。測定するごとに、特性が変化して安定しません。1ヶ月間ほど何度か試みてみましたが、今回は、断念しました。次回のお楽しみです。
結局のところクロストークの測定はうまくいきませんでした。
ぺるけさんがクロストークの改善手法をweb頁「 シングルミニワッター・チューニング・ガイド 」で公開されています。しばらくこのままで楽しんでから、この記事にある、2SK3767のソース側とアースとの間に10μF/400Vのコンデンサを入れてみる方法を試してみたいと思います。そして、WaveSpectraによる測定にも再挑戦して、なんとかクロストークを測定できるようトライしてみます。
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