ぺるけさんのweb頁『利得の測定法』が参考になります。
今回は、こんな感じで測定しました。
測定する毎に利得の値が微妙に異なるので不思議だったのですが、出力によって差異が出ることに気がつきました。そこで、出力を徐々に上げていきながら利得を計算してみました。下記は、横軸を出力電力(負荷8Ω)、縦軸を総合利得(信号周波数1KHz、負帰還後)としたときの、R-CHの特性グラフです。出力電力が0.003Wくらいまでは利得が増えていき、そしてゆるやかに下降していきます。また、0.2Wを超えると急激に下降します。L-CHも同じ傾向でした。
ぺるけさんのweb頁『利得の測定法』に、「注意点その4・・・適切な信号レベルで測定する あまり小さい信号レベルで測定すると、被測定アンプや測定系の残留ノイズの影響で測定結果が狂います。大きすぎる信号レベルでは、被測定アンプで歪んでしまってやはり測定結果が狂います。」とありました。
Ø “小さい信号レベル”の部分
出力電力が0.003W(入力電圧では30mV、出力電圧では150mV)くらいまでは出力が大きくなるほど利得値が増えていきます。本機の残留ノイズは1mV以下でしたので、感覚的には、残留ノイズの影響を受けるのはもっと小さい信号レベルのような気がします。もしかすると、何か、別な不具合があるのかもしれません。
Ø “大きい信号レベル”の部分
グラフに歪み率を重ねてみました。重ねるにあたっては、歪み率は右肩上がりの曲線なので、歪み率の反数を縦軸に取りました。たしかに、利得が右肩さがりとなり0.2Wを超えるあたりから急激に落ちていく(悪化する)傾向は、歪み率特性と良く似ており、利得と歪み率(反数)の2つの曲線が重なりました。(歪み率の縦軸スケールは左右CHとも同一の32%です)
今回の測定結果は、異常ではなさそうです。
下記は入力電圧が30mVのときのデータです。L-CHの利得は5.17倍、R-CHは5.03倍で、0.14倍の差がありました。両CHの平均値 ( 5.10倍=(5.17+5.03)/2 ) を 1 としたときの百分率では、この差は、2.7%になります。
真空管を左右chで入れ替えて測定してみました。すると、利得が小さかったR-CHが入れ替え後は大きくなりました。下のグラフは、左右のCHで2本の真空管6922#1と6922#2を挿し換えたときの利得特性です。
このことから、左右chの利得の差は、購入した真空管6922の個体差が主要因と推定できます。
ヒアリングでは気がつきませんので、6922を新たに購入することはせずこのままで良しとしました。このくらいの左右CHの利得の差は、アンプビルダーとしてはどうとらえるレベルなのでしょうか。
無負帰還の利得を測定しないまま製作してしまいました。そこで、入力電圧Ein、出力電圧Eo、負帰還電圧Ef を測定した結果から総合利得(無負帰還)を計算で求めました。(本末転倒なことでしょうけど。。。)
負帰還の教科書から、負帰還前の利得を Aoとすると、アンプの入力電圧Ein から負帰還電圧Ef を減算した値が Ao倍に増幅されるので、出力電圧 Eoは、Eo=(Ein−Ef)*Ao です。
従って、負帰還前の利得Aoは、負帰還のときの出力電圧Eoと負帰還電圧Ef から、Ao= Eo/(1+Ef ) @ と計算できます。
@式から、負帰還前の利得Aoは、L-CHが16.1倍、R-CHが14.8倍となりました。(入力電圧=30mVのとき)
また、負帰還量F(=1+Ao*β)は、入力電圧Einと負帰還電圧Ef から、F=Ein/(Ein−Ef ) A と計算できます。(注参照)
A式から、負帰還量Fは、L-CHが3.11倍、R-CHが2.95倍となりました。(入力電圧=30mVのとき)
帰還率β は、負帰還抵抗の値から求めると、82Ωと560Ωなので、β=82Ω/(82Ω+560Ω)=0.128。一方、Ef とEoの実測値から帰還率β を求めると、両chとも、β=Ef /Eo=0.131で、概ね一致しました。(抵抗の実装値と設計値の違いが差異要因と思います。負帰還抵抗は、値の揃ったペアを選別したのですが値を記録してませんでしたので想像です。)
下表は、入力電圧が30mVと50mVのときのデータです。
入出力特性は、完成後に測定したため負帰還後の特性のみですが、下のようになりました。
歪み率特性の測定結果から言えることですが、入力電圧が300mV付近で、最大出力 (THD+N=5%) となりました。また、曲線の最大入力電圧である450mV付近では、歪み率は10%程度で、出力は0.5Wほどでした。 入出力特性の測定は、歪み率の測定と同時に行うと時間が短縮できることに後で気がつきました。
感想めいたことで恐縮ですが、 何故だか、このグラフを書いてみたかった。むかし読んでいたMJとかラジオ技術の真空管アンプの製作記事にはこのグラフが必ず記載されていた気がします。すっと伸びた直線と最後のお辞儀が印象的でした。このグラフが描ければ、りっぱなアンプビルダーの仲間入りができるような気持ちにさせるグラフでした。
実際に書いてみましたが、この入出力特性のグラフをどう利用するのか、いまひとつ理解できませんでした。
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