超3極管接続(Ver.1) 50BM8 シングル・アンプ

本番機 制作

Ver.01 2015/12/7

 

♪ レイアウト

薄くて、奥行きのある縦長、できればコンパクトなアンプに仕上げたいと思います。薄いシャーシだとスマートそうな感じを受けます。奥行きがある方が、場所を取りません。

トランスの配置実験を行い、また、平ラグを使った各部品の詰め込み状況を見ながら、レイアウトを決めました。シャーシのサイズは15cm23cm4cmでいけそうです。

      

 

 

☞ トランスの配置実験は、とても難航しました。その顛末は、こちらに記録しました。

♯ 「トランスの配置実験」 

☞ 配置実験、レイアウト決め、シャーシ−の加工、平ラグの設計、ほとんど全て、平行して行っています。元凶は、電源トランスとヒータートランスからの誘導ハムのためです。

 

 


♪ シャーシ

♬ 買えなかった

シャーシは、奥澤さんのO型アルミシャーシ「O-27 15cmx25cmx4cm 1mm (925)を予定して、秋葉原に買い出しに行ったところ、「本日は売り切れ!」 とのこと。あら〜、困ったなぁ。。。店番のお兄ちゃんと話そうとしたところ、この日のお兄ちゃんはどうやらご機嫌斜め。そそくさと奥澤を後にし、エスカレータで上の階へ。エスエス無線さんに寄ってみましたが、サイズがいまひとつ。

秋葉原にはそう何度もこられないので、他のお店を色々回って、帰途につきました。疲れたぁ〜。

  

 


♬ そしてシャーシを自作

売り切れ!?

それなら、自作でなんとかしようじゃないか。 

どうせなら、サイズは、O-27より2cm短い23cmだ!!

木枠で回りを囲んで、切り出したアルミ板の天板を乗せれば、なんとかなる。

 

と、妙に意気込んでしまいました。

 

 

 


♬ アルミ板の切断 

天板に使うアルミ板は、1mm厚としました。30cm20cmの板材から切り出します。

アルミ板の切断は、1mm厚なので、力もいらないし簡単です。ケガキ線に金属定規をあて、カッターナイフかプラスチックカッターで何度かけがき線に切れ込みを入れ、厭きたら、同様に裏面に切れ込みを入れる。ほどよい(自力で折り曲げられる)ところまで、2度ほど折り曲げを繰り返せばパキッと折れます。後は折口をやすりで綺麗にするだけ。

 

 


♬ ハンドニブラ

天板の電源トランス用の4角形の穴は、ハンドニブラで空けることにしました。久しぶりに工具箱から取り出し、手にして思いました。さて、これって、どっち向きで使った? 四角形の穴あけは、記憶では、四隅に丸穴をあけたような? 

どうも使い方を忘れてます。

物忘れが多いですが、これはいつものこと。ネットで助けてもらいました。 

 

 

使い方を忘れたハンドニブラ

 

下の写真は、穴あけ作業の経過です。右端の写真で、穴あけの途中から切り口の周囲の擦り傷が少なくなっていることが分かるでしょうか?ハンドニブラの歯元のコの字型パーツを外したためです。外した方が綺麗に切れました。

 

 


♬ アルミ板の曲げ加工

側面を木枠で囲んで、天板(アルミ板)を乗せる、ということを考えていたのですが、webでアルミ加工の頁を見ているうちに、1mm厚のアルミなら自力で折り曲げられそうだと思われました。

そこで、アルミ板を見様見真似でL字に曲げてみたところ、あっさりと曲がりました。

 

ならばと、天板をコの字型にする加工に挑戦したところ、これまた、簡単に曲がってくれました。

  

 

1mm厚なので、このままトランスを乗せるとたわみます。

 

 

使った道具は、作業台(部材を挟んで固定できるやつ)、L型アングル2本、金属(ステンレス製?)定規、板切れです。

 

作業台

L型アングル

金属定規

 

 

 

セッティングは、L型アングル2本で、アルミ板と金属定規を、作業台に挟み込みました。金属定規は、折り畳む側に挟みました。微調整して、ケガキ線と金属定規の高さを合わせます。作業台より少し浮かせないと90度までは曲がりません。

セッティングが完了したら、板切れをアルミ板とL字アングルに当てて、ゆっくりと押し倒すと、あっさりと曲がってくれます。1cm4cmLアングルができました。39mmの幅でケガキ線を入れるとアルミ板の板厚1mmと合わせて40mmの幅で曲がります。

同じ要領で、コの字型も難なくできました。ただ、穴は、曲げてから空けた方が曲げ加工は容易です。

 

 

 

 

同じ要領ですが、横着をして金属定規を使わずに曲げてみました。電源トランスのカバーの固定部分(台座?、足?)を垂直に折り曲げる加工です。LアングルのRが大きいことと、作業台の固定が甘かったことから、これは見事に失敗! 下図の黄色枠です。金槌とペンチで修正することになりました。片方の固定部分は、金属定規を使い問題なく垂直になりました。

試していませんが、金属定規を使わないときは、L型アングルの天地を逆にすれば良いかも知れません。

 

 

 

  

 


♬ やってしまった

曲げる向きには注意したはずですが、やってしまいました。天板の写真を見てお分かりかもしれませんが、天地が逆です。電源トランスは、正面から見て右側に設置するはずでしたが、左側になってしまいました。トランスの配置実験を何度も繰り返したすえにやっと決まったレイアウトでした。誘導ハムが心配です。ダメだったらと心配しつつ、誘導ハムの電圧をこの天板で測定しました。

測定の結果、電源トランスとヒータートランスの位置関係が左右で逆になるこの天板でも、誘導ハムの電圧は、ほぼ同じ値となりました。良かった!

また、電源SWの穴を空けていなくて幸いでした。

 

 

 


♬ 穴あけ

真空管の放熱用の穴(6mm径x20ケ)の出来がいまひとつでした。

ポンチの位置がどうしてもズレます。さらに、6mmのドリルを使って一発であけたところ、形がオムスビ形になってしまい、リーマで補正。ということで、列はよれて、大きさもバラバラに。さらに、どうせなら真ん中の穴は大き目にしてしまえとリーマで拡大していくうちに、真空管ソケットを固定する穴と合体してしまった、どうしよう。

面白くないので記念撮影はスキップです。

 

 

 


♬ 側板

側板は銘木、としたかったのですが、200円ほどで購入した手持ちの部材から切り出しました。銘(?)はありません。位置合わせが微妙な作業でしたが、天板・リア板の固定用に1cmほどの角材をボンドで接着しただけです。塗装は、「PASTE WOOD STAIN #1400」を3回ほど塗りました。あと12回ほど塗り重ねる予定です。天板を載せる部分を3ヶ所としたのですが、強度が不足したようなので後で追加しています。1cmほどのポイント載せではなく、1本の横木にしてしまえば良かったです。

  

 


♬ 出来上がり

組み上げてみます。側板が気持ちよくスパッと嵌りました。いい感じ。気分よく百均の青棒と古布で磨いて、UCL82と記念写真をパチリ。

 

 

 


♪ トランスカバー

電源トランスとヒータートランスは、むき出しのままでは危険なので、カバーを作りました。最初は、4mmのシナ合板で箱を作ったのですが、どうもマッチしません。塗装で飴色を期待したのですが白っぽくて横板と合いませんし、厚みのためか違和感があります。(後ろにこっそりと写っている。)そこで、鉢底ネットを材料としてメッシュカバーを作ってみました。四方の抑えは、和菓子の箱から取った薄板です。黒く塗る予定。試着したところ、トランスが見えすぎる感じでした。安全性は落ちてしまいしたが、後ろの箱よりは良かった。

 

 


♪ 電源トランスとヒータートランスの装着

横に寝かせた状態でシャーシに装着するため、バンドの固定部分(台座?、足?)とシャーシをL字金具で取り付けることにしました。この固定方法では、シャーシに4箇所で固定できれば良かったのですが、固定されるのは片側の2ヶ所です。固定度合いが低いですがやむなしとしました。また、配置の都合から、バンドの固定部分は、垂直に折り曲げました。

 

出番を待つ電源トランスとヒータートランス

 

 


♪ 平ラグの制作

平ラグのパターン設計では、部品配置やアースをうまく割り込ませる等で誘導や発振を避けることができるそうですが、その手前のレベルでウロウロしています。

どうも、うまく設計ができません。部品のサイズが実態と合わない、抵抗値を書き込めない、修正に手間がかかる、etc

苦手ではありますが、平ラグを使用することにしました。

 

今回は、webで拾ってきた平ラグの絵をベースに実態配線図のように描いてみました。部品が少ないこともあり、それなりに描けた(設計できた)ような気がします。

こんな感じです。

☞ VRからの配線は、向かって右側の方が合理的でした。

       

 

 

そう言えば、昔の雑誌には、実態配線図が折り畳み頁で付いていました。あれは好きでした。とくに抵抗がカッコ良かったかなぁ。上条さんの記事の配線図もいいです。

半田の匂いは大好きです。最近の半田ってあんまり匂わないような。

シャーシの高さが4cm、電解コンデンサーの直径が2.6cm。全ての部品が電解コンデンサーより出っ張らないようにしました。部品は、全て試作機で使用したものです。

   

   

 


♪ 2SK1758の放熱

2SK1758の消費電力は、2Wほどです。試作機では何も考えずに小型の放熱器に取り付けました。本番機では、『放熱板、放熱器(ヒートシンク)の放熱設計法』を参考にさせていただき、簡単な熱設計をしました。その結果から、シャーシに直付けにとして放熱させてみます。真空管が結構熱いはずですが、大丈夫かな?

 

 


♪ 入力部の配線とアース

シャーシの横と裏が金属では無いため、ノイズには弱いのではなかろうかと想定し、RCAジャック〜ボリューム〜初段までの配線はシールド線を使いました。

シャーシにアースに落とすポイントは、L-CHの平ラグを固定するスペーサのネジ止め部にしました。

真ん中のアース母線(太い黒線)上に赤丸がありますが、この赤丸より左側は直流電流が流れて、右側は流れません。そして信号のアースは右側に取るようにしました。効果のほどは、?です。

 

☞ 右側にVR2ケありますが、これは単にお絵かきの都合からで、実態は2VRです。

 

 


♪ 組み立て

まず、トランスを4ケ乗せ、AC100V周りの配線を済ませました。通電を確認したあと、出力トランスの2次側に現れる電源トランスとヒータートランスからの誘導ハムの電圧をチェックしました。L-CH40μVR-CH50μVでした。トランスの配置実験では40μV40μVでしたので、若干の悪化です。トランスを固定するためのネジ穴の位置が微妙にずれたためと推定します。次いで、電源の平ラグ周りの配線を行い、B1B2B3電圧をチェックしました。あとは、あまり順番を意識せず、半田付けを楽しみました。

あっという間に配線が終了。今回は珍しく火傷をしませんでした。

 

ただ、残念なことに、一発OKとは行かず、出力管V2のカソード電圧が高圧のまま所定の電圧まで落ちませんでした。原因は、2SK1758のソースとゲートを間違えて配線してしまったことです。もうひとつ、周波数特性が500KHzでも80mV以下になりません。調べると、低周波発振器を接続してボリュームを最大にするとL-CHの残留雑音が100mV近くになりました。入力電圧はほぼ0Vです。この残留雑音の周波数は120Hzくらいから200HzR-CHはまっとうです。発振でしょうか? ケーブルを入れ替えたりしているうちに、今度はR-CHに症状が移りました。お昼ごはんを食べてからゆっくりと入力周りの配線をチェックしたところ原因が判明しました。両CHとも、RCAジャックとシールド線の+と−の接続が逆でした。RCAジャック裏面の形状から何やら勘違いしたようです。それにしても、このような配線ミスで、何故、この事象が発生するのでしょうか?

 

直流電圧の値は、回路図に記載しました。ほぼ設計値どおりです。

シャーシに直付けにした2SK1758の発熱ですが、杞憂でした。通電後数時間してもさほど熱くはなりません。

電源トランス、ヒータートランスが温かくなりますが、触れないほど熱くはありません。

ちょとなぁと感じたのは、ボリュームのつまみが温かくなることです。近くにいるUCL82のヒータ−の消費電力は両管で10Wですが、10Wでも結構きますね。

 

シャーシ内は、部品点数も少なかったので、余裕があります。100V/50Vの配線は写真で見て上部の左側面に、入100V/50Vの配線は向かって右側面に、出力は真ん中という感じです。UCL82のソケット横のラグ端子には、OPT1次側の7KΩと5KΩ端子のリード線が接続されています。負荷7KΩの音色が良かったので、こうしました。SP端子には、4Ωと8Ωの両方を出したかったのですがスペースの都合で諦めました。

                                                                                                                              

 

 


♪ 本番機の回路

試作4号機では100Hzの最大出力がいまひとつだったので、出力管V2の動作点をフィッティングし、プレート電圧215V、プレート電流31Aとしました。このフィッティングにより、100Hzの最高出力の落ち込みは改善されました。1KHzでの出力は2Wです。

フィッティングの状況はこちらに記録しました。

♯ 「動作点のフィッティング」 

本番機の回路は、以下です。

♯ 回路図(増幅部)  ♯ 回路図(電源部)

 

 


♪ 特性

残留雑音がお手本機と同様に100μVを下回りました! トランスの配置実験で苦労した甲斐がありました。

 

周波数特性、歪み率、内部抵抗、クロストークなどのグラフは、こちらにまとめました。  

♯ 「特性グラフ

 

 


♪ 完成記念写真

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

   

 

 上條信一さんが考案された「超三極管接続回路」、いつかは制作してその音色を楽しみたいと思っていました。 今年2015年になりそれがやっとかないました、良い音で鳴っています。上條さん、ありがとうございました。

 


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