超3極管接続(Ver.1) 50BM8 シングル・アンプ

本番機 トランスの配置実験

Ver.01 2015/12/7

 

本番機のレイアウトを決める前に、ぺるけさんの「真空管アンプの素187頁〜)」に記載されているトランスの配置実験、トランスの配置を色々と変えてハム電圧の測定を行いました。

本番機の残留雑音は、100μVを下回る(フィルター無し、帯域1MHz)ことができました。この実験をせずにレイアウトを決めていたら、上條さんが設計された回路の残留雑音の少なさ(残留雑音 入力ショート、98μV/8Ω、Aフルタ― 10μV/8Ω)の再現は叶わなかったかと思います。

 


♪ 本番機のレイアウト

本番機のレイアウトは、奥行きのある縦長で、下図がいいなぁ、と考えていました。

このレイアウトだと、出力トランスと電源トランス、ヒータトランスの間隔は3cm5cmほどです。ZT-03ESはショートリング付きですが、HT-5002は付いていません。どの位の誘導ハムが出力トランスに現れるのでしょうか?

電源トランスからの誘導ハムの許容範囲は、どの程度なのか分からないのですが、試作機では、出力トランスの2次側の誘導ハム電圧が70μV80μVでしたので、この数値を参考に実験をしました。

   

 


♪ 誘導ハム電圧の測定回路

回路というほどではないですが、誘導ハム電圧の測定は、出力トランスの2次端子(4Ωと0Ω)間の電圧をVT-176で測定しました。

 

☞ 使用した電子電圧計のVT-176は年代物の未校正品ですので、記載した測定値は大小関係を表す相対値と見てください。VT-176の最低レンジは、0.3mVですので、100μV以下の値は、いまいちだと思います。

 

 


♪  コアの中心軸が平行となる配置

机の上にトランスを並べて、電圧を測定しました。

教科書にあるとおりで、うまくありません7cm離しても100μV以上ありました。電源トランスの取り付け方法が容易なので期待はしていたのですが、さっさと見切りをつけました。

 

 


♪ コアの中心軸が直交となる配置

電源トランス・ヒータートランスを横に倒す配置ですが、教科書にあるとおり、こちらは良好でした。

 

♬ 実験A

出力トランスから見える電源トランスの面は、天面か、底面か、左側面か、右側面です。ヒータトランスも同様です。天面か底面かの区別無し、左右の側面の区別無しとしてしまえば、電源トランスとヒータトランスの配置の組み合わせは、4パターンですが、実際に測定してみると、天地、左右ともに、測定値が異なりました。そこで、16パターン全てを測定しました。

     トランスの配置

²  机の上に各トランスを平置きして、測定しました。高さは、フラットです。

 

²  基本的な位置関係は、以下です。

・出力トランスITS-2.5WSと電源トランスZT-03ESの間は3cm

ZT-03ESは正面から向かって右側、HT-5002は正面から向かって左側、ITS-2.5WSはコアを横向き、で固定

・幅は15cm

・それぞれのトランスは各中心軸に対して平行か直角

 

 

²  トランス間の中心軸を合わせることはせず、上記の基本的な位置関係を維持したまま、15cmの幅のなかで、ハム電圧の値が最少となるような電源トランスとヒータトランスの位置を探しました。

²  例えばヒータトランスHT-00270°などの斜めに配置すると90°のときよりハム電圧が改善することがありますが、それは、別測定としました。

 

下表が測定結果で、各パターンでの最小値です。表の横軸は、電源トランスZT-03ESの向き、縦軸は、ヒータトランスHT-5002の向きです。

全てコアが直交するパターンですが、最低で30μV、最高で430μV10倍以上の差が出ました。トランスの向きが0°x0°の組み合わせがベストでした。

 

 

☞ 15cmの幅のなかで、ハム電圧の値が最少となるような電源トランスとヒータトランスの位置を探しましたが、同じパターンでも、例えばZT-03ESHT-5002を密着、できるだけ離す、右側に寄せる等々で、かなり値が変化しました。また、L-CHは良くなるけど、R-CHは悪化する等CH毎に逆の変化となることも多々ありました。

 

 


♬ 実験B

通常のアンプでは、電源トランスをシャーシに穴をあけて落とし込みをします。そこで、机の上で、出力トランスITS-2.5WS、ヒータトランスHT-5002を段ボールの上に乗せて測定してみました。

  

 

測定パターンは、電源トランスの各向き(0°、90°、180°、270°)のなかから、測定Aで成績の良かったパターンを1ヶずつ、計4パターンを選びました。

下表が測定した結果で、@からCの4パターンとも、数値が改善しました。

  

 


♬ 実験C、D

実験A、Bは、机(木製)の上での測定でしたが、未使用の穴のあいていないアルミシャーシ(お弁当箱型・底板無し)の上にトランスを乗せて、測定してみました。測定パターンは、実験Bと同じです。

 

結果は、アルミシャーシを使わない方が良い! また、穴は不要! という結果でした。あらら。。。シャーシに測定系のアースをつないであるんだけどなぁ。

  

 


♬ 実験E

制作を中断した穴あきアルミシャーシがあったので、この上で測定をしてみました。電源トランスと他トランスの高さの関係は測定Bと同じで、電源トランスは穴に落とし込まれています。シャーシサイズは、16cm30cm4.5cmで、厚さは1.5mmです。この写真では、電源トランスの端子が底を向いていますが、測定のときは天を向いています。

 

測定パターンは、実験Bと同じです。

下表が測定結果です。これまでの結果とまた異なる結果となりました。

  

 


♬ 実験F

本番機で使う加工したアルミ天板で測定しました。サイズは、15cm23cmで、厚みは1mmです。折り曲げ加工のミスから、電源トランスとヒータートランスの位置がこれまでのA〜Gまでの実験での配置とは逆になり、正面からみて左手側が電源トランスとなってしまいました。

尚、写真では、リア面がありませんが別加工したアルミのリア面を取り付けて測定しました。側面は木の板にするつもりなので無しのままです。

 

 

各パターンの測定値は、またまた、変わっています。実験EでベストだったCがダメでした! 良かったのは、@と➂で、相互の位置関係がとてもクリティカルでミリ単位での調整が必要ですが、50μVを切りました。50μV程度と割り切れば位置関係はブロードです。

  

実験F´

電源トランスの端子側の面は、AからFまでの測定では天を向いていましたが、天地を反転させ地を向く配置でも測定しました。この向きが本命。値は、天地どちら向きでもほぼ同じでした。

 

実験F´´

天板を折り曲げる前の状態でも測定しています。電源トランスとヒータトランスは、これまでのA〜Gの実験と同じく、正面から見て右手側です。値は、実験Fと大差ありません。

 


♬ 実験G

これまでの測定値は、電源トランスの0V端子とヒータトランスの0V端子は、同じAC100Vの片側と結ばれているときの値で、下図のa)での値です。この接続を、電源トランスの0V端子とヒータトランスの100V端子を同じAC100Vの片側と結ぶ、という逆接続のb)にしてみたところ、異なった測定結果となりました。配線には注意が必要です。

 

また、参考までに、ヒータトランスの有無、電源トランスの有無による差異を測定してみました。c)は隣に置いてあるだけ、d)、e)は存在せず、という状態です。

 

測定したパターンは、➂の180°-180°の組み合わせで、実験Aと同じ環境(机の上)です。

測定結果は、以下のようになりました。

  

 


♪ その他

♬ 出力トランス1個での実験

最初、出力トランスは、1個で実験をしていたのですが、1個のときと2個のとき、また、2個でも位置がずれているときで、測定値が異なることに気がつきました。ラフな位置取りを探るときは1個でも良いかと思いますが、追い込み・最終確認は、左右の出力トランスをしっかり配置する方がベターかと思われます。

 

♬ 測定のときのアースの処理

教科書(187頁〜)」に、『トランスのコアやバンドはすべて測定系のアースにつなぎ』とありました。@をつなぐと、スーと針が落ちて未通電のときにはほとんど0μVになりました。A、➂は、今回の測定環境では、アースにつないでも測定値の変化が無かったため、ほとんどの測定で浮いていました。 

@     シャーシ

A     電源トランスZT-03ESE端子

B     トランスの外側のカバー、バンド

 

♬ 傾きや高さ、中心軸

横から見て傾けないほうが良い値でした。

高さによっても変化します。

上から見てトランス間の中心軸がずれるほど悪化するケースと大差のないケース、良化するケースと様々でした。

水平方向に斜め(90度以外)に回転すると数値が改善する、また、L-CHR-CHの数値の差が無くなるケースが多々ありました。

   

  

 

♬ 実験EFの違い

実験EFで結果が異なった理由は、分かりません。

以下のような差異がありますが、何が影響しているのでしょうか?

²  側面の有無。実験Eはお弁当箱タイプ、実験Fは側面が有りません。また、底板は双方とも有りません。

²  サイズは、実験E16cm*30cm*4.5cm、実験F15cm*24cm*4cm

²  板厚は、実験E1.5mm、実験F1mm

²  その他として、実験Eは、ところどころに真空管用の穴がある

 

 

 


♪ 最後に

実際に実験した順番は、この記載したAからGの順番とは異なります。コアが平行になる配置を見切ったあと、まず、穴あきシャーシを使った実験Eから行いました、その結果から、レイアウトを決めて、ハンドニブラで天板に使う20cm30cmのアルミ板に穴をあけました。念のため、穴をあけただけの状態で測定をしたところ(実験F´´)、数値が実験Eとあまりにも異なっていたことから、訳が分からなくなり、シャーシ制作と平行して、記載していない実験も含み試行錯誤的な測定をしています。

まぁ、結果オーライで、実験Eで決めた配置から電源トランスを90°回転させるだけで済んだため、天板の穴は大きくなりましたが、無駄な加工にはなりませんでした。

 

いろいろ実験をしましたが、レイアウトを決める事前の評価として、どこまで何を行えば本番機での配置が決定できるのか少々不明瞭、という結果となりました。

恐らく、今回は、電源トランスとヒータトランスの間で誘導ハムの打ち消しが起こっていて、その打ち消し作用は相互の位置関係に対してクリティカルであり、また、アルミシャーシがこの打ち消し作用に一役買っていて、より複雑さを加速させた結果、このようになったのかと思います。

従い、今回の測定値自体には、汎用性はほとんど無い、と考えます。

 

☞ このように測定したOPT2次端子間の電圧が仮に1mVだったとき、アンプの残留雑音は1mV以下にはならない、ということかと想定されますが、よく分かっていません。


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