特性データ |
2017/5/31
今回の測定の目的は、何かしら妙な実装になっていないかをチェックするためですが、もうひとつ欲張って、負帰還をかけたときの特性の変化・改善の様子を見ることにしました。
F 以下のデータは、アンプをひっくり返して裏蓋を取り去った状態でのデータです。この状態だと部品温度が通常の状態より低くなり利得が上がりますので、正確には「アンプをひっくり返して裏蓋を取り去った状態での特性データ」です。従い、通常の状態での測定値の本編の総合特性の表の値とは差異があります。(別稿で詳細をまとめました。)
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♪ 総合利得と負帰還量総合利得は、負帰還無しの状態で、L-CH(RAYTHEON管)が7.5倍、R-CH(RCA管)が7.0倍となりました。71Aを左右のチャンネルで挿し替えたところ、L-CHが7.0倍、R-CHが7.4倍となりましたので、利得の差は、71Aの個体差が主要因だと推定されます。62Ωと470Ωによる負帰還の量は、計算すると1.9倍と1.8倍です。負帰還後の利得は、実測で、L-CHが4.0倍、R-CHが3.9倍となり、教科書どおりの減衰でした。
ð 以下、断り書きが無い限り、L-CH(RAYTHEON管)&R-CH(RCA管)の組み合わせによる測定です。
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♪ 周波数特性 |
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左図は、R-CHとL-CHのNon-NFBのときの特性です。高域の山谷あたりでの差異を除き両CHの特性曲線が重なり合っています。右図は、NFB=5.2の負帰還をかけたときのR-CH側の特性です。ぺるけさんが公開されているデータと見比べてみましたがおかしなところはなさそうです。
下図は、Non-NFBの状態とNFB=5.2dBの状態での特性です。出力は0.125W。帯域特性は負帰還量に応じて広帯域化するそうですが、理論どおりのデータとなっていました。 |
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*低周波発振器の下限が10Hzのため低域の-3dBとなる周波数は測定できませんでした。 |
♪ 出力歪み率=5%のときの出力は、L-CHが0.79W、R-CHが0.78Wとなりました。負帰還有りの状態です。 また、歪み率が1%と5%となるときの出力を周波数をパラメータとして測定しました。負帰還をかけた状態です。100Hzから徐々に出力が落ちていき、1KHzのときと比べ出力が半減する周波数は、歪み率が1%では50Hz、5%では36Hzでした。
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♪ 歪み率特性EfuさんのWaveSpectra・WaveGeneとサウンドインターフェース(TASCAM US-144MKU)を使用してノートパソコンで測定しました。数値は、THD+Nの値ですが、出力が低い領域での測定値はN成分が少ない(歪み率が良い方向になる)ように思えますので、THD+α特性といった方が良いかもしれません。 左図がL-CH、右図がR-CHの負帰還有りの特性です。
面白いのは、10KHzの歪率で、出力が0.8Wくらいから出力が増えるに従って歪みが減りました。両CHともです。また、負帰還無しでも同じ事象となりました。周波数を変化させてみたところ、7KHzではこの事象は発生せず、7.5KHz、8KH、9KHzでは発生しました。何故なのか、さっぱり分かりません。
L-CHの歪率はR-CHと比べると100Hzと1KHzの歪み率が良くありません。そこで、L-CHのRAYTHEON管をR-CH側に挿し替えてR-CHの歪率を測定したところ、L-CH側に挿したときと同じ歪み率となりました。このことから、左右CHの歪率の差異は、71Aの個体差ということになるかと思います。
下図は、負帰還無しと負帰還有りの曲線を周波数毎に比べたグラフです。歪みは負帰還量に応じて減少するはずですので、負帰還無しのときの歪み率を負帰還量(1.8倍)で除した曲線(グレーの点線)を追加してみました。100Hzと1KHzでは理論どおりにグレーの点線と青線(負帰還有り)が重なりましたが、10KHzでは歪みの減少度合いが理論値より少な目という結果です。
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♪ 残留雑音残留雑音は、負帰還有りで左右とも0.21mVとなりました。ぺるけさんの設計されるアンプはどれもとても静かなアンプで、魅力のひとつです。また、負帰還無しのときL-CHが0.4mVでR-CHが0.38mVだったので理論どおりのデータでした。
F 測定方法は、中古の電子電圧計「KENWOOD VT-176」で直接ダミーロードの端子間電圧を測り、測定値=残留雑音値としています。VT-176のカタログスペックは、“ フィルター無し、5Hz〜1MHz ±10% ” です |
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F 面白かったのは、入力部のDCカットのコンデンサー0.33uFの上部の淵を指で触れると大きくVT-176の針が振れたことです。そして触る箇所、右端、真ん中、左端とで振れ方が変化しました。また、L-CHでは良化方向(Non-NFBで最大80uV)、R-CHでは逆に悪化方向(Non-NFBで最大1mVほど)で針が振れました。このDCカットのコンデンサー0.33uFを短絡したところ、この事象は当然ながら発生しませんでした。 F 我家では測定する際には二つの注意事項があり、この注意事項を守らないとVT-176の針がフラフラして安定した測定ができません。 ❶:残留雑音を測定する際は、他の測定器を繋がない。 ❷:測定は、朝から夕方4時までに行う。 ❷は、測定できる時間が限られてしまい、とても困っています。 |
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♪ クロストーク出力電圧を最大出力に近い2400mV/1KHzとして測定しました。残留雑音が0.2mVなので-82dBが測定限界となります。 中域では左右のチャンネルとも-80dB程度と良好です。 お手本の改訂版の特性と比べると、残念ながら、低域は20Hz以下、高域は30KHz位から上が思わしくありません。実装面での腕の違いですね、きっと。
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悪化している高域と低域ですが、逆チャンネルの信号を拾っているのは初段でしょうか、それとも出力段でしょうか。 試しに、71Aのグリッドとプレート、それぞれで、逆チャンネルに現れる信号量を測定してみました。出力レベルは先と同じ2400mV/0.72Wで、負帰還は外してあります。 測定結果の右図を見ると、低域は71Aのグリッドでは良好です。高域は、71Aのグリッドですでに悪化しています。従って、低域は出力段に、高域は初段に原因がありそうです。 いつか、バラックで組んであれやこれやといじれたらと思います。 |
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♪ ダンピングファクタと内部抵抗ON-OFF法で測定しました。測定時の負荷抵抗は4Ω、また、無負荷出力=200mVです。 負帰還有りの状態で、ダンピングファクタは、L-CHが4.8、RCHが4.5でした。
右図は周波数毎のR-CHの特性で、10Hzまでフラット、20KHzで半減しています。L-CHも同じ特性でした。
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負帰還後のダンピングファクタは、負帰還前のダンピングファクタと負帰還量から、計算できるそうなので、計算値と実測値を比較してみました。 100Hz以上では計算値と実測値が良く一致しています。100Hz以下での差異の理由は分かりません。もう少し勉強してみます。
F 負帰還無しのとき(オレンジ線)は、100Hz以下でダンピングファクタが上昇しています。これは、出力トランスT-1200の1次側のインダクタンス成分が低い周波数で表面化し、アンプの内部抵抗が小さくなるため。また高域でダンピングファクタが下降していくのは、出力トランスT-1200の漏示インダクタンスと浮遊容量の影響。(勉強した事柄のメモ)
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♪ 温度通電後2時間が経過したときの温度は、右記のようになりました。シャーシーの内部は35℃、周囲温度+15℃でした。71Aの頂部は48℃(RCA)と51℃(RAYTHEON)でした。
F 測定には、デジタルテスターMETEX M-3070D(K熱電対)を使用しました。熱電対の固定方法により実温度と表示温度に差異が出るそうです。今回は、シャーシ内部は熱電対の先端は中空で、その他の場所は熱電対のワイヤーを手で持って先端を押し当てるやり方で測定しています。71A頂部の温度がぺるけさんの記事より低めなのは、固定方法に問題があったかもしれません。
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♪ 留意事項本稿では、出力トランス2次側からの負帰還配線をカットしたときの状態を「負帰還無し」と見なしました。8Ωに470Ω+62Ωが並列に接続したときの合成抵抗値が7.88Ωで8Ωとは1.4%の差。この1.4%の影響は測定誤差に入ってしまうと思われたことと、負帰還の有無を切り換える作業の容易さからです。(本来の“負帰還をかける前の状態”とは異なると思いますが手をぬきです。勉強中の身としては不遜?)
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