総合利得の変化

2017/5/31

 

アンプをひっくり返して裏蓋を取り去った状態で一連の測定を行い、裏蓋を閉じてアンプを通常の状態に戻しました。これで止めておけば良かった(?)のですが、何となく総合利得を測ってみたところ、1割ほども落ちています。あらら??

測り直しましたがミスはなさそうです。何故なのか、悩んでしまいました。真空管を逆さまにしたのがいけなかった? そう言えば、アンプをひっくり返していたときもバラックで組んだときよりも利得が少し落ちていました。このときはエージングによる変化かなぁくらいであまり気に留めなかったのですが、今回は落ち幅がとても大きいです。

考えた結果、思い当たったのは温度です。電源を入れると温度が上昇します。この温度の上昇に伴い利得が下がるのではないでしょうか?そこで、普通の状態とアンプをひっくり返して裏蓋を取り去った状態それぞれで、電源投入からの経過時間に対する温度と利得の変化を実測してみました。測定では、利得の変化が分かり易いかと負帰還無しとしました。

 


♪ 温度と利得の関係を測定した結果

下記のグラフが、普段の姿の状態での測定結果です。横軸が電源を投入してからの経過時間、縦軸はシャーシ内部の温度と総合利得です。シャーシ内部の温度(オレンジ線)は、電源投入から上がり始め90分ほどかけて15℃上昇して安定しました。一方、総合利得(青線)は、7.2倍から逆に下がっていき6.5倍ほどで落ち着きました。温度と総合利得は相関関係ありと見えます。

   

 

次に、下記のグラフが、アンプをひっくり返して裏蓋を取り去った状態での測定結果です。この状態では、シャーシ内部の温度は測定しにくいので、2SK30Aの頭部の温度を測りました。2SK30Aの温度(オレンジ線)は、電源投入から上がり始め35分ほどで5℃上昇し26℃で安定しました。一方、総合利得(赤線)は、7.2倍から下がっていき6.9倍ほどで落ち着きました。

      

 

以上から、ザックリとですがシャーシ内の温度が1℃上昇すると利得が0.7%ほど下がる、また、シャーシをひっくり返して裏蓋を取り去ると部品の温度上昇が1/3程に抑制される、というデータが得られました。

これで原因がはっきりして一安心です。

 


♪ 通気孔

本機は、シャーシ内の換気という面では、電源トランスとシャーシ表面との間に隙間があるだけで、ソケット周り等に通気孔を配しませんでした。これは、ソケット周りの通気孔は71Aの冷却には役に立たないだろうこと、見栄えの良い通気孔をあける技量がないこと、71Aはぬるい真空管、というもっぱら真空管から見た理由からです。シャーシ内温度と利得の変化には考えが至りませんでした。おそらく、シャーシ上部に通気孔を追加すれば、シャーシ内温度が2℃くらい?は低くなり、温度が一定になるまでの時間が30分ほどは短縮されると想像されますが、聴いていて今のところ違和感は感じられないので、追加加工は見送ることにしました。

 


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