超3極管接続(Ver.1) 50BM8 シングル・アンプ 試作3号機 制作と特性 |
Ver.01 2015/12/7
♪ 試作3号機の回路 下図が、お手本の記事(改造2)を追試した試作3号機の回路です。初段がカスコード化されています。回路の基本構成&定数は、お手本の改造記事のデッドコピーです。初段FETは、2SK117と2SK170の両方を試しました。記載してある電圧値は、2SK170での実測値です。また、初段のカスコード化以外の改造点は、ZD(12V)を区分C2から区分A2に交換し併せてカソード電流が35mAとなるよう2SK1758のソース抵抗を交換しています。
|
♪ 組み立て 慣れたせいか、短時間で組みあがりました。回路構成がスッキリして部品数が少ないことが分かります。今回から真空管を立ててみました。
|
♪ トランジスタの破壊 試作1号機から、私の不注意によりトランジスタをいくつも壊してしまいました。耐圧には注意要です。以下、印象的だった2つの事故をここで記録しておきます。
壊したトランジスタ達の一部
² その1 入力ボリュームを絞りきることで “入力ショート” の状態としていたが、2SK117の足の部分でダイレクトに短絡させたら(@)、もっと残留雑音が少なくなるかも?などと妙な考えが頭をよぎってしまい、誤って、A(*)を短絡させてしまった。両CHとも、しかも通電中に。しばらくして出力管V2のカソード電圧が200V以上になっていることに気づいて、VR2を回したが異常なままだった。電源OFF後に間違いを見つけた。 2SK117を壊したかもと思い、試作ボードから外してIDSSを測定したところ、壊れていた。(IDSSを測定した時はFETから焼ける匂いがした。) 両CHの2SK117を新品に交換して、各部位の直流電圧を測定。正常な値だったので、これで済んだと思ったが、L-CHの残留雑音が40mV以上となっていた。R-CHは正常だったので、2SC1775AをL-CHとR-CHで交換したところ、今度は、R-CHの残留雑音が40mV以上となっていた。 ということで、被害は、両CHの2SK117とR-CHの2SC1775A。 *:記憶違いで、もしかすると➂だったかもしれないし、何かをショートさせてしまったかもしれない。Aでは壊れないと思う。再現実験はしていない。 興味深かったのは、直流動作は正常、交流動作は異常という中途半端な2SC177Aの壊れ具合。
² その2 測定に少々飽きたので、音楽を聴こうと思い、通電した状態のまま、出力側をダミーロードからスピーカーに、入力側にプリアンプの出力RCAピンに差したところ、スピーカーから異音が出た。電圧を当たったところ、片CH の出力管V2 のカソード電圧が異常だった。真空管、2CS1775A、2SK170を順次逆のCHと交換して、被害の範囲を2SC117Aと2SK170と特定した。 プリアンプの電源はON状態、本機の入力ボリュームの位置はもしかすると最大だったかと思う、こんなことで壊れる!? 再現実験はしていない。これで予備品が無くなった。
|
♪ 特性 試作3号機の諸特性です。比較のため、試作1号機の数値も併記しました。
|
♪ 残留雑音 L-CHが0.27mA〜0.46mAと振れ幅があるのは、何度か測定したときの最低値と最高値です。個々の測定では若干振れ幅はありましたが、概ね一定でした。この0.46mVの値を示した理由は、悪化する方向での測定上の問題が、このあと制作した試作4号機での測定に見つかりましたので、そのためだと思われます。このため、値は、参考値です。問題点の詳細は、別章「残留雑音測定の問題点」でまとめます。
参考値ではありますが、残留雑音は、試作1号機のざっくり1/3に低下しています。お手本機はもっと良い数値ですが、狙いに沿った結果が得られたかと思います。
|
♪ 周波数特性 2SK117と2SK170での差異はありませんでした。 高域は42kHz(-3dB)で、試作1号機の47KHz(-3dB)に比べて若干ですが悪化しています。お手本でも同様に改造後は悪化していますので、トランジスタとFETの違いが要因でしょうか。 |
|
♪ 歪み率 0.1W以上では、2SK117版、2SK170版ともに、悪化しています。これは、お手本も同様で、初段をJ-FETに変更したことが要因との解説がありました。 1KHzでは、右肩上がりの部分が一直線ではなく、0.1Wを境に“く”の字型になっています。理由は分かりません。 10KHzでは、最大出力近傍で出力増加に伴い歪み率が良くなりました。この理由は分かりません。 2SK117版と2SK170版とを比べると、2SK117版に軍配が上がりました。
☞ 0.1W以下は、参考程度かと思います。(「歪み率測定の問題点」参照)
|
♪ 初段回路の机上計算の値の確からしさ FETを選択する際に、データシートからバイアス値と所要の入力電圧を求めました。この机上値を実測値と比較してみます。どの程度の差異だったのでしょうか? まず、バイアスの値です。これは、良く一致しています。実機では、ドレイン電流が0.52mAでしたので、急遽、ID=0.52mAの値もデータシートを使って同じ手法で求めましたが、多少のドレイン電流の相違は気にならないようです。
次は、所要の入力電圧です。出力2Wのときの入力電圧で比較してみます。 実機での総合利得は、2SK117が8.9倍、2SK170が12.7倍でした。ということは、2W/8Ωの出力となる入力電圧は、それぞれ、0.45V=√(2W*8Ω)/8.7倍と0.31V=√(2W*8Ω)/12.7倍です。 机上値の出力2Wのときの入力電圧は、2SK117が0.41V、2SK170が0.30Vです。データシートのグラフの読み取り精度(特にID=0mAのときのVGS値には自信が持てなかった)から、もう少し差異が出るかと予想していましたが、まぁまぁでした。 尚、ドレイン電流の差異は、入力電圧の机上値には影響を与えないと考え、0.59mAでの値のままで比較しています。
|
♪ ヒアリング
音の印象ですが、力強さのなかに静寂さが加わりました。消えていく余韻が美しい。また、50BM8を立てたことで音にしまりが出ました。(冗談です。)
試作1号機、試作2号機、試作3号機の音色の違い、そして、2SK117と2SK170の音色の違いは、、、私の耳では捉えられませんでした。
♪ 初段FETの選択
歪み率と増幅率から、本番機では、2SK117を採用することにします。