超3極管接続(Ver.1) 50BM8 シングル・アンプ

試作4号機 出力管の動作点を変更

Ver.01 2015/12/7

 

下図は、出力管V2のロードラインです。このロードラインを眺めて、なにやらプレート電流に余裕があるなぁとの印象を受けました。

また、出力管V2のカソード電圧(対グランド)は、70Vが指示値ですが、試作1号機で、カソード電圧60V80Vを試してみました(ミニ実験)。下表がこの実験の結果ですが、カソード電圧を60Vとしたとき、プレート損失が減っているにもかかわらず出力がアップしました。

これらから、出力管V2のプレート電流を減らし、プレート電圧は増やす方向で動作点を調整してみたいと思います。

 

  

 

 


♪ 電圧配分の確認

出力管V2の動作点のプレート電圧をアップさせるとして、電源トランスの端子は最大の240V端子を使っているためB電圧を上げることはできません。増幅部のなかでのやりくりが必要です。そこで、増幅部の電圧配分を確認してみます。

下図は、試作3号機のB電圧の配分図です。この図から明らかなように、B電圧の増減に対して、出力段は定電流回路が、初段はQ3のコレクタ電圧がバッファーとなり、V1V2の動作点を維持していることが分かります。

従って、このバッファー量を減らせば出力管V2の動作点のプレート電圧をアップできます。

出力段側は、カソード電圧が70Vもありますので、結構余裕でアップできます。初段側は、出力管V2の動作点のプレート電圧をアップすると、相対的に初段電圧(初段Q3のコレクタ電圧)が下がります。この電圧をあまり下げると、出力管を励振できなくなります。必要な初段(Q3のコレクタ電圧)の電圧振幅を22Vくらいとすると、Q3のベース電圧が12Vなので、初段電圧の下限は、34V=22V+12V)位でしょうか。

とすると、試作3号機の初段電圧は48V程度なので、現状のB電圧のままで、V2のプレート電圧は、14V(=48V-34V)位までならアップ可能です。

 

  

 

 

 

 

 


♪ 我が家の商用100V

問題は、我が家の商用100Vの状況です。いつ何時も100Vであれば良いのですが、変動はかなりあって、B電圧が10V程度下がるときがあります。

このため、商用100Vが低下したときでも出力特性を維持しようとすると、初段電圧の余裕14Vを全部食いつぶすわけにはいかず、出力管V2のプレート電圧は、実質4Vしかアップできません

 

 


♪ プレート電圧を稼ぐ

何とか電圧を稼げないかといろいろと考えて、初段Q32SC1775Aのベース基準電圧を12Vから5Vに落とすことにしました。12Vから5Vに落とす方法は色々あるかと思いますが、図のように簡単に抵抗2本で分圧させることにしました。

これで、7Vほど稼げます。

それから、消費電流を絞る意味で、ZDによる基準電圧生成回路を両チャネルで共通にします。1.2mAの削減です。

☞ この基準電圧値5Vは、ぺるけさんの作例を参考にしました。また、2SK117は、ドレイン電圧が低いほうがゲート漏れ電流が少なくなるそうです。一石二鳥かな?

 

 

 

 


♪ プレート電流を絞ると電源電圧が上がる

試作1号機でのミニ実験でカソード電圧を70Vから60Vにしたとき、B電圧が5Vほどアップしました。当初は気がつかなかったのですが、これは、カソード電流が35mAから30mAになり電源トランスから取り出す電流が10mA少なくなったからです。

右図は、電源トランスの東栄ZT-03ESの整流特性データです。この特性図から計算すると、電流が10mA減ると整流後電圧が4.5V上昇することになり、ミニ実験の実測値と概ね一致します。

 

従って、出力管V2のプレート電流を絞ると電源電圧がアップし、増やすと電圧がダウンします。

おおよそ、1V/1mACH当たり)見当です。

 

 

 


♪ 増加できる動作点の範囲

整理すると、

    初段電圧の余裕を食いつぶして14Vアップ

    我家の商用100Vの電源事情から10Vダウン

    初段Q32SC1775Aのベース基準電圧を5Vに落として7Vアップ

    整流特性によりカソード電流の1mA増減で1Vアップ・ダウン

    電源トランスの容量から3.3mA/CHアップ(供給可能電流を80mAとした)

    基準電圧生成回路の共通化で0.6mA/CHアップ

となります。

   

 


♪ 新たな動作点の候補・動作点2

増加できる動作点の範囲などを踏まえ、プレート電圧を10Vアップし、プレート電流を4mAダウンさせた25mA-218V(動作点2を試してみることにしました。これまでの出力管V2の動作点は、29mA-208V(動作点1)です。

この動作点変更により、プレート損失が10%ほど抑えられて、ロードラインから概算すると出力は落ちない(アップする)はずです。また、出力トランスに流す直流電流が4mAほど減ります。

 

 

 


♪ 新たな動作点と各部の電圧・電流の想定

各部の電圧、電流値を想定する際、今回、シミュレータに活躍してもらいました。何せ、5極管はSG電圧によって特性が異なりますし、実機でのカット&トライでは商用100Vの変動によって時間を要してしまうので、助かりました。

例えば、出力管V2のプレート電流は、ロードラインから求めていますが、このプレート電流は、2SK1758のソース抵抗を交換して調整しますので、交換しやすいソース抵抗値を横目で見ながら求めました。この際、

@     ソース抵抗を220Ω+68Ωとする。

A     カソード電流は、VGSZD、ソース抵抗値から計算

B     カソード電流からアンプの総電流を計算

C     アンプ総電流と電源の整流後特性から、B電圧を概算

D     B電圧とカソード電流をシミュレーション回路に設定し、DC解析を実施して、V2のプレート電圧が所要の電圧になるよう2SK117のソース抵抗を調整、プレート電流を求める。同時に初段電圧他をチェックする。

と、いった感じシミュレータを使いました。

 

 

 


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