超3極管接続(Ver.1) 50BM8 シングル・アンプ 試作1号機 ミニ実験 |
Ver.01 2015/12/7
お手本とした回路は、VR2により出力管V2の動作点を調整します。具体的には、カソード電圧(対グランド)を70Vに調整するよう指示されています。カソード抵抗が2KΩなので、70Vのときは35mAのカソード電流が流れることになります。今回、このVR2を調整して、カソード電圧60Vと80Vを試してみました。カソード電流は、それぞれ、30mAと40mAです。特性はどのように変化するのでしょうか? また、音の違いを聞いてみたいと思います。
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♪ 特性・歪率 全体的には、カソード電圧・電流を80V・40mA、60V・30mAとしてもあまり差異はありません。
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♪ 特性・最大出力 上記グラフでは最大出力近傍の差異が分かり難いので、出力1W以上の領域を拡大した歪率特性が下図です。最大出力は、カソード電流が 30mAのとき2Wで、以下、30mA > 35mA > 40mA の順ですが、個々の差は、0.15Wほどでした。あまり差はありませんが、30mAのときの「2W」って切りがいいなぁ。
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♪ ロードライン 最大出力は、カソード電流が一番少ない30mAのときでした。沢山電流を流した方が出力は大きくなりそうですが、どうしてカソード電流の最も少ない30mAのときに最も出力が多くなったのか、ちょっと不思議です。そこで、ロードラインを引いて検証してみました。
下図が、ロードラインです。超三極管接続回路は歪率がとても低いので、動作点を中心とした電流・電圧振幅は等しい、としています。負荷は10KΩです。 図から明らかなように、各ロードラインともバイアスが0V側のときに最大出力(出力が頭打ち)となり、プレート電流に余裕があることが分かります。このロードラインから最大出力をOPTのロスを10%として計算すると、実機同様に、カソード電流が 30mA > 35mA > 40mAの順で、値は、2.1W、1.8W、1.5Wとなりました。 単純にカソード電流を多く流せば出力が増えるということではないということがわかりまました。これで納得です。
☞ 背景のEP-IP特性は、カソード電流が35mA(指定値)の特性で、30mA、40mAの特性とは合致しないのですが本稿での本質ではないので気にしないことにしました。
☞ 電源トランスの整流後電圧特性から、カソード電流が5mA変化するとB電圧が5Vほど変化します。また、OPTの1次側抵抗による電圧が若干変化します。当初、このことに思い至らず、カソード電圧が±10V変化したときのプレート電圧は、単純に∓10Vの変化としてロードラインを引いていました。気づいたのは、随分と後になってからです。
☞新たな疑問(と言うには大げさ)ですが、最大出力の計算値が、2.1W、1.8W、1.5Wで、実測値が、2.0W、1.8W、1.7Wと微妙にずれているのが気になります。誤差の範囲としてしまえばそれまでですが、この理由は、最大出力の近傍ではロードラインから外れて出力管V2が動作するからかもしれません。(別章「Annex ロードラインが動く」を参考)
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♪ おまけ−動作点の変化による最大出力をシミュレータで比較する 以下はおまけです。 VR2のカソード電圧の調整では、プレート電圧とプレート電流が同時に変化します。プレート電流とプレート電圧を個別に変化させてみたらどうなるのかシミュレータで比較したデータです。 尚、シミュレーション回路は、出力管V2の電流値の調整が容易な試作3号機をベースにした回路で、OPTは理想トランスで損失無しです。
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❆ 電圧を一定にして電流を下げてみる プレート電圧を一定にして、プレート電流を29mAから25mAと22mAに変化させた結果です。面白いことに、樹の主枝と小枝のような図柄です。25mAと29mAのときは、最大出力に達した以降に入力電圧を上げると出力が減りました。これから見ると、電流を下げるメリットはプレート損失&スクリーングリッド損失を小さくする以外はなさそうです。★印が、動作点のカソード電圧・電流が70V・35mAのときの特性です。
❆ 電流を一定にして電圧を上げてみる プレート電流を一定にして、プレート電圧を208Vから213V、218V、228Vと変化させた結果です。10Vアップする毎に出力は0.2Wほど増加、20Vアップの228Vでは出力は2.5Wを超えています。
❆ 電流を下げ、電圧を上げてみる プレート電流を25mAまで下げて、プレート電圧を208Vから、218V、228Vと変化させた結果です。損失は減り、出力はアップしています。
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♪ ヒアリング ヒアリングしてみました。好みは少々成績の悪かったBかなぁ。。。 印象を言葉にすることが難しくて、困った。
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