超3極管接続(Ver.1) 50BM8 シングル・アンプ

試作1号機 特性

Ver.02 2015/12/30

 

ブレッドボードスタイルでの試作機のまま、ただ音楽を楽しんでいるだけでは前に進まないので、スピーカーを8Ωのダミーロードに繋ぎ直して、アンプの特性測定を開始しました。

 


♪ 諸特性

ダンピング・ファクタは、10.0でした。これが超三極管接続回路の威力ですね。また、リプルフィルターが無い電源にもかかわらず、残留雑音は1mV(参考値)を切りました。

 

 


♪ 周波数特性

周波数帯域は、0.125Wのとき、低域は、測定下限の10Hzが−0.18dB高域のカットオフ周波数(−3dB落ちの周波数)は、47KHzです。

L-CHR-CHの曲線は、差異が無くほぼ重なり合っています。

ありがたいことに、ぺるけさんが『真空管アンプの素』でITS-2.5EWSのトランス単体の特性図を公開されています。それによると、150KHzにピークが1ヶあるのですが、このピークが本機ではぐっと落ちおり、小さなピークが2ヶ出ていました。P-G帰還の帰還ループ内にはOPTが含まれないのでITS-2.5WS 10KΩで使用したときの素の特性でしょうか。

 

 

次いで、1Wのときの周波数特性を測定しました。1Wのときには、低域は0.125Wのときより悪化して19Hz(−3dB)、高域は0.125Wのときとほぼ同じ48KHz(−3dB)でした。

 

♬ 低域の周波数特性

出力が大きくなると、低域の特性が悪化します。どの程度の差が出るのか、1kHz以下の特性を出力を変えながら測定してみました。

測定結果を見ると、特性曲線の傾きは出力に依存せず一定のようです。また、1KHzの出力を0dBとしたときの10Hzでの減衰量を出力毎にプロットしたググラを作ってみました。出力が2Wのときには10Hz10dBくらい落ちそうです。

どうしてこのようになるのか?分かりません。説明できるようになりたいものです。

 

 

 

 

 

♬ 高域の周波数特性

高域のカットオフ周波数(−3dB落ちの周波数)は、47KHzでした。

お手本機は、もっと良くて90KHzまで伸びています。お手本機で使用している出力トランスは、タンゴのU-608、本機で使用している出力トランスは、イチカワのITS-2.5WSです。高域特性がお手本より悪化している理由は、この出力トランスの違いでしょうか?

*  ITS-2.5WSは、トランス単体では、東栄のT-1200より高域が伸びているそうです。出力トランスをこのT-1200に交換して測定したところ、なんだか一寸妙な感じの曲線ですが、-3dB落ちになる周波数は、24KHzでした。参考ですが、T-1200を使用した6DJ8ミニワッターの高域特性は、64kHz-3B)でした。

*  出力管V2の負荷を10KΩの抵抗器、帰還管V1404KΩの抵抗器と見立てて、初段の出力インピーダンス5.8MΩと出力管V2の入力容量による高域の減衰特性を計算してみたところ(「P-G帰還 高域での増幅率を計算」を参照)、-3dB落ちになる周波数は390KHzでした。

 

 


♪ SPから見た内部抵抗とダンピング・ファクタ

無負荷出力0.2V・負荷4Ωの条件でON/OFF法で周波数毎に測定しました。下記のグラフが測定した結果です。

KHzのとき、SPから見た内部抵抗は0.80Ω、ダンピング・ファクタは10.1でした。また、低域は、10Hzまでほとんどフラットです。高域は、4KHzくらいから変化し始めています。

5極管でありながら、何故このように高いダンピングファクタが得られるのか?、「超三極管接続回路」の仕組みの一端を探ってみました。次章に記載します。

 

 

 

 


♪ 歪み率

EfuさんのWaveSpectraWaveGene+サウンドインターフェース(TASCAM US-144MKU)を使用してノート・パソコンで測定しました。

特性曲線の傾向は、各周波数とも、

Ø  1W位までは右肩上がりで、

Ø  1W位から1.4W程度までは曲線が寝ており

Ø  1.4W以降は急激に悪化しました。

各周波数とも、歪率が2%程度で出力が頭打ちになり、更に入力を増やしても出力は逆に減っていきます。これは、グリッド電流が流れ始めて、その作用のための振る舞いではないか、と想定しました。真偽のほどは定かではありません。

10KHzでは、面白いことに、最大出力に達した後、更に入力を増やしていくと、両CHとも歪率は低下していきました。この理由は、分かりません。

 

 

上條さんが公開されているお手本機(改造1)の歪率と比べてみると、1KHzはほぼ同じ値、100Hzは本機の方が良く、10KHzではお手本機のほうが良好です。

 

 

   

 


♪ 最大出力

通常、真空管アンプの最大出力は、歪み率が5%のときの値を採用するようですが、本機の出力は、歪率が2%前後で頭打ちとなり、入力を増やしても歪みは増えるものの出力は増えず、逆に出力が低下する状況でした。入出力特性曲線で表すと頂上から右肩下がりの曲線になります。最大出力の表示値として、この頂上の頭打ちになる値を持ってきました。

    

 

 


♪ 残留雑音

残留雑音は、入力ショートの状態で8Ωのダミーロード端子間の交流電圧を電子電圧計「KENWOOD VT-176」で測定した値です。VT-176のカタログスペックは、“ フィルター無し、5Hz1MHz ±10% ” です。

リプルフィルターが無い電源にもかかわらず、残留雑音は1mVを切りました。何故1mVを切れたのか? そのメカニズムを考えました。別章「改造2の追試・リプル雑音」に記載します。

お手本機は、本機よりもっと良くて0.54mVです。

 

残留雑音の値が、0.83Vから0.98VL-CH)と幅があるのは、測定のときにこれだけの幅で針が振れていたのではありません。日をおいて何度か測定したのですが、その都度、値が変わったので、最低値と最高値を記しました。

また、電源を入れていない状態で10μV100μVの間の値を示します。針の振れが無かったり、10μV50μVとか50μV100μVの間をフラフラもします。ひどいときは、200μVを超えます。(測定端子間をショートすると0μVになります。)50BM8を叩くとビンビン針が振れます。アルミのボードに手で触ると変化します。グリッドへの配線に触れる悪化します。

制作を進めていくうちに、このようにバラつく理由がいくつか分かりました。悪化する方向で、環境や測定自体に問題がありました。推定ですが、最低値が本来の値かと思います。詳細は、別章「残留雑音測定の問題点」でまとめます。

 

 


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