図1は、P-G帰還回路で入力信号(前段の出力信号)が減衰されグリッドに印加されるまでを表した回路です。周波数が上昇するにつれて、入力容量Csのインピーダンスは小さくなります。結果、周波数が上昇するにつれてグリッド電圧が小さくなっていくことが判ります。
このグリッド電圧の降下をくいとめることができれば、高域特性が伸びることになります。
そこで、Rs1にコンデンサーCxをパラレルに接続してみます。
周波数が上昇するにつれて、このCxのインピーダンスが小さくなりますので、Rs1の両端の電圧が小さくなり、相対的にグリッド電圧が大きくなるはずです。
Tina7で実験してみます。実験回路は、EL34をモデルとした以下の回路です。動作条件は、『7.3 高域での周波数特性の観察』で周波数特性図を描いた@のパターンと同一のとしています。
下図が、Rs1にパラレルに抱かせたCxの値をパラメータとして0pF、25pF、50pFの3ヶで振った結果です。
25pFでは高域がフラットに伸びて138KHzだった高域ポールが472KHzまで改善、25pF以上では高域が上昇しずぎ、となりました。
結構効くみたいです。
次に、真空管とトランスを使ってより実態に近い回路でシュミレーションしてみます。
u トランス=F2003の場合
トランスの1次側の負荷が2KΩとなるよう、2次側の負荷抵抗値を4.6Ωとしました。
結果は、以下です。25pFで概ねフラットになるようで、204kHzまで高域が伸びました。ただし、下図では判読しがたいですが、25pFでは若干高域が盛り上がっており、もう少し小さい値のほうがフラットになるようです。
u トランス=F-475の場合
トランスの1次側の負荷が2KΩとなるよう、2次側の負荷抵抗値を3.2Ωとしました。
結果は、以下です。25pFで概ねフラットになるようで、207kHzまで高域が伸びました。ただし、F-2003の場合より読みやすいですが、25pFでは若干高域が盛り上がっており、もう少し小さい値のほうがフラットになるようです。
F-475の回路で位相特性も計測してみました。
¬ 位相の回転は、Cxを付加したほうがゆるやかになっていますが、25pFと50pFでは、あまり差異はありませんでした。
¬ −3dB落ちのカットオフ周波数のあたりで、0pFが−243度、25pFが−245度でした。あまり差異がありません。
¬ 100KHzを超えるあたりで、25pFと50pFの特性が逆転しています。
何故ゆるやかになるのか等これらの事象の理由は、判りません。このあたりは、これからの勉強です。まぁ、悪影響は無いみたいです。
P-G帰還回路の高域特性を改善する手法として、Rs1にコンデンサーCxをパラレルに接続する方法は、効果がありそうでした。
Q Cxの値は、CxのリアクタンスをRcxとして『7.3 高域での周波数特性の観察』で求めた高域での増幅率を計算する式のRs1をRs1//Rcxに置き換えて計算、または、シミュレーションにより算出。
Q シミュレーションでは、真空管モデルが無くともCxの値は算出可能。
Q 実際の装置では配線容量が加味される等でカット&トライでの調整が必要と思われます。
Q 位相の回転はゆるやかになるようです。理由は判りません。
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