カットオフ周波数 |
先の高域の周波数特性図から、P-G帰還の高域の特性は、
Q 前段の出力インピーダンスを大きくしても、高域の特性悪化は見られない。逆に、前段の出力インピーダンスを小さくしても、高域の特性は良化しない。
Q 負帰還抵抗を小さくすると、高域の特性は良化する。
Q 五極管の入力容量は小さいため、負帰還抵抗値を適切に選べば、高域の特性はさほど悪化しない。
と推察されました。
このあたりを等価回路を用いて検証します。
また、先の高域特性の計算方法は周波数から増幅率を求める方法であり、ダイレクトにカットオフ周波数を計算できません。今回は、ダイレクトにカットオフ周波数の値を概算できる式を求めます。
検証にあたっては、通常の増幅回路、及び、P-G帰還を施した増幅回路でのグリッド−プレート間の増幅率Agpは、
・ 通常の増幅回路とP-G帰還回路では、差異は無い
と見なすことにします。(この見なしが無ければ、お手上げでした。。。 「グリッドからプレートまでの増幅率」を参照 )
通常回路、P-G帰還回路とも、Agpが周波数特性を持っているため、入力容量Cs=Cin+(Agp+1)*Cgpは、周波数により差異が出ます。このため解析が複雑になりますが、この見なしにより、周波数による変動がなく一定、として扱え、解析が容易になります。
− Cs=Cin+(Agp+1)*Cgp で、周波数による変動はない
また、この見なしにより、回路全体の増幅率の変化と、入力からグリッドまでの増幅率の変化が等価となるので、入力からグリッドまでの変化だけを検討すれば良いことになります。具体的には、グリッドに入力される信号電圧値が入力信号電圧値の半分となる周波数が、カットオフ周波数になります。
通常回路でのカットオフ周波数
検証する通常の回路を図1で示します。前段の出力インピーダンスをZo1、グリッドとプレート間、グリッドとカソード間の電極間容量をそれぞれCgp、Cinとして明示しています。
図2は、図1の回路の中域、及び、高域での入力からグリッドまでの等価回路です。中域では入力容量は無し、カットオフ周波数では入力容量をCs1としています。
グリッドに入力される信号電圧値は、中域では減衰せずEinのままで、カットオフ周波数では、先の見なしにより、中域の電圧値の半分になります。
従い、カットオフ周波数での入力容量Cs1のリアクタンスは、前段の出力インピーダンスZo1と等しくなり、カットオフ周波数での入力容量Cs1のリアクタンスをRcs1、カットオフ周波数をFpとおくと
です。
以上から、通常の回路でのカットオフ周波数は
となりました。
次は、P-G帰還回路(図3)を検討します。
図4は、回路図3の中域、及び、高域での入力からグリッドまでの等価回路です。中域では入力容量は無し、カットオフ周波数では入力容量をCs2としています。
グリッドからプレート間の増幅率をAgpとすると、プレートにはグリッド電圧Egの−Agp倍の信号(交流電圧)が現れます。
Rf1は、グリッド側から見ると、プレート側の電位がEo=−Agp*Egなので、値が(1+Agp)分の1倍の大きさでグランドに直接落ちる抵抗とみなせます。
Rx=Rf/(Agp+1)
カットオフ周波数では、グリッド電圧が中域でのグリッド電圧の半分に減衰されるので、入力容量Cs2のリアクタンスをRcs2、カットオフ周波数をFpf とおくと
変形し(#1)、 P-G帰還回路でのカットオフ周波数を求めると
P-G帰還回路でのカットオフ周波数Fpfは、
従い、P-G帰還回路でのカットオフ周波数Fpfは、
以上から、通常の増幅回路にP-G帰還を施すと、カットオフ周波数Fpは、
となりました。
@を変形すると(#2)
A式から、P-G帰還回路では、同一の負帰還量(1+A*β)で比べた場合
Q 前段の出力インピーダンスを大きくしても、高域の特性悪化は見られない。逆に、前段の出力インピーダンスを小さくしても、高域の特性は良化しない。
Q 負帰還抵抗を小さくすると、高域の特性は良化する。
Q 五極管の入力容量は小さいため、負帰還抵抗値を適切に選べば、高域の特性はさほど悪化しない
が言えるかと思います
A式を扱いやすい単位にすると(ぺるけさんのインピーダンス式をまねてみました。)
となります。
P-G帰還でのカットオフ周波数の概算値が手軽に計算できるかと思います。暗算は無理だなぁ。。。
このカットオフ周波数概算式を検算してみます
先の高域特性図を描いたEL34の3ヶのケースを例にします。“詳細な計算“は6.2の計算式による値、”簡易計算”は“カットオフ周波数概算式” による値です。
値はほぼ一致しており、1MHzまではどうかと思いますが、それなりに使えるのではないでしょうか。
補足
#1 変形過程
#2 変形過程
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