下記の左図は、先に作成した P-G 帰還を施した仮想三極管 EL34 のEp-Ip 特性図、右図は、ベース管 EL34 のグリッド電圧とプレート電流の関係を表したEg-Ip 特性図、です。(縦軸のスケールを合わせています)
この2つの曲線、何か似ていませんか?
左図の仮想三極管 (P-G帰還) のグリッド電圧=−40V の Ep-Ip 曲線上の何点かを抽出し、右図のベース管の Eg-Ip 特性図の曲線上に重ね合わせてみます。
両図の横軸は、Ep-Ip 特性図がプレート電圧、Eg-Ip 特性図がグリッド電圧であり、同じではないので縮尺します。具体的には、Ep-Ip 曲線のプレート電圧 Ep の値 を帰還定数の β 倍に縮尺して、Eg=β * Ep+α とします。α は重ねるための調整数で、今回は−35V です。縦軸は同じプレート電流なので同じ値とします。こうして変換してできたのが下記の真ん中の表です。
この真ん中の表の各点をベース管の Eg-Ip 特性図上に赤点でプロットしました。Ip が低い部分以外重なっていませんか?
双方の曲線の傾きを比べてみます。
Eg-Ip 曲線の傾き K1 は、相互コンダクタンス gm です。
一方、Ep-Ip 曲線の傾き K2 は、内部抵抗の逆数です。 P-G 帰還を施した場合の内部抵抗 rpf は、次の式のように近似できます。(「仮想三極管の三定数」 を参照)
このことから、P-G 帰還を施した場合のEp-Ip 曲線の傾きK2 は、近似的にベース管の相互コンダクタンスの帰還定数β 倍になります。
従って、仮想三極管(P-G帰還)のEp-Ip 曲線の傾き ≒ベース真空管のEg-Ip 曲線の傾き*帰還定数 となりました。
(先の重ね合わせの際にEp-Ip 曲線の横軸サイズを帰還定数 β 倍したのは、このためです。)
gm はプレート電流の値やプレート電圧の値により変化しますので、1本のEg-Ip 曲線が全てのEp-Ip 曲線にぴったり重なるとまではいかないですが、ベース真空管のEg-Ip 曲線の横幅 (グリッド電圧) を1/β 倍すれば、P-G 帰還回路のEp-Ip 曲線にそれなりに近似する、ということが判りました。
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