超3極管接続(Ver.1) 50BM8 シングル・アンプ 試作4号機 総合利得 |
Ver.01 2015/12/7
出力管V2のプレート負荷を7KΩとしたときの総合利得は、10.5倍となりました。10KΩ負荷のときは8.9倍でしたので、10KΩから7KΩにしたことで総合利得が1.2倍に増加しました。 一方、出力トランスのインピーダンス比による減衰率は、2次インピーダンスを8Ωとすると、1次インピーダンスが10KΩのときは0.028倍、7KΩのときのは0.034倍になるので、10KΩのときを1倍とすると7KΩでは1.2倍です。 ということは、出力管V2のプレート負荷が10KΩから7KΩになったにもかかわらず、初段から出力管V2のプレートまでの利得は、ほぼ変化していない、ことになります。どうゆうことでしょうか? 6BM8(P)の普通の増幅回路なら、10KΩから7KΩにすると利得は約0.8倍に落ちます。理屈の上では、負帰還により落ち幅が少なくなっていると想定できますが、もう少し詳しく知りたくて、回路をトレースしました。 また、興味深いことも分かりましたので、まとめておきます。 |
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♪ 回路をトレース 右図でトレースし利得を計算してみます。 回路構成から、帰還管V1のプレート電圧Ep1は、出力管V2のプレート電圧Ep2とバイアスEc2に分割されるので、 Ep1=Ep2−Ec また、出力管V2のグリッドからプレートまでの増幅率をApとすると Ep2=−Ec*Ap 従って、 Ep2=Ep1/(1+1/Ap) ・・・ @ となります
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仮に、初段回路の相互コンダクタンスが1mSだったとすると、±100mVの信号が入力されたとき、ドレインに現れる信号電流は±0.1mAです。この±0.1mAの信号電流が出力段に流れたとき、帰還管V1の真空管抵抗値は404Kだったので、帰還管V1のプレート−カソード間には、±40.4V=±0.1mA*404KΩの信号電圧が現れます。 ここで、出力管V2・6BM8(P)のグリッドからプレートまでの増幅率Apは、プレート負荷が10KΩのときは約39倍、また、7KΩのときは30倍ですので、(V2のgm=5.3mS、rp=28KΩより計算) 出力管V2のプレートに現れる信号電圧は、@式から、 プレート負荷が10KΩのとき、Ep2=Ep1/(1+1/Ap)=40.4V/(1+1/39)=39.4V プレート負荷が7KΩのとき、Ep2=Ep1/(1+1/Ap)=40.4V/(1+1/30)=39.1V となります。 以上から、出力管V2のプレートまでの利得は、プレート負荷が7KΩのときは負荷10KΩのときと比べ、0.99倍=39.4V/39.1Vとなり、ほとんど変化しないことになりました。
ポイントは、帰還管V1のプレート(とカソード間)に現れる信号が出力管V2のプレートとバイアスに塩梅よく分配される、また、出力管V2の増幅率が高い、ということでしょうか。
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♪ 出力段の電流・電圧変換利得 先に初段からの信号電流がどう出力管V2のプレート電圧になるのかをトレースしました。ここでは、さらに、等価回路で出力段の電流・電圧変換利得を求めてみます。 帰還管V1を真空管抵抗としてみたときの抵抗値をRf、出力管V2の相互コンダクタンスをgm2としたとき、初段の負荷RL1は、下記で表すことができました。(「ロードラインを引いてみる」を参照) 初段の負荷RL1≒Rk1+Rf/(RL*gm2+1) 右図から、初段の負荷RL1を使って、出力段に信号電流IDが流れたとき、出力管V2のグリッドへの入力信号Ec2を求めると、
なので、 出力段を電流/電圧変換回路とみたときの利得Hoは、出力管V2の内部抵抗をrp2とすると
よって、
となります。 |
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² 出力段を電流/電圧変換回路とみたときの利得は、帰還管V1の抵抗値で近似されることが分かりました。また、アンプの利得を稼ぎたければ、Rfを大きくすれば良いことになります。Rf=rp1+μ1*Rk1なので、増幅率の大きな3極管ほど利得面では有利です。 ² 出力段の利得から、出力管V2のパラメータが消えてしまいました。 “深いP-G帰還” のなせる業かと思います。
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♪ 回路全体の総合利得A 回路全体の総合利得Aは、初段を電圧/電流変換、出力段を電流/電圧変換と捉えると、先の結果から、以下のようになりました。
ここで、gm1=初段回路の相互コンダクタンス、Rf=帰還管V1の抵抗値 Dt=OPTの1次から2次への電力損失(0.8〜0.9位だそうです)
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♪ ❶式はどのくらいの近似? ❶式は、近似式です。等価回路で導き出してしまうと、どのくらいの近似なのか直観的に把握しにくいのですが、先に使った図を見ると明らかで、出力管V2のプレートに現れる信号電圧(Ep2)は、帰還管V1(Rf)のプレートに現れる電圧(Ep1)に等しいとしています。 こうやって見ると、ちょっと近似というより概算ですね。
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試作3号機の実測値と❶式による計算値とを比較してみます。 ❶式では、初段回路の相互コンダクタンスの値が必要です。この相互コンダクタンスの値は、「試作3号機 代替えFETの選択」で求めた、ドレイン電流の最大振幅の値とその入力電圧のデータがありますので、これらから求めることにしました。 下表が比較結果です。式の成り立ちから少なめに計算されますが、❶式は、設計時の概算としてはそこそこでしょうか。
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