超3極管接続(Ver.1) 50BM8 シングル・アンプ

試作4号機 残留雑音

Ver.01 2015/12/7

 

試作4号機での残留雑音は、0.24mV0.32mVで、お手本機(改造2)の0.098mV(フィルター無し)には及びませんでした。なんとか追いつきたくて、いくつか残留雑音に関して実装面での実験をしてみました。理論的な実験では無く、試行錯誤的な実験です。

 

☞測定に使った電子電圧計のVT-176は年代物の未校正品ですので、記載した測定値は大小関係を表す相対値と見てください。VT-176の最低レンジは、0.3mVですので、0.1V以下の値は、特にいまいちだと思います。

 

 


♪ 改造A:基準電圧の配線

試作4号機では、動作点を戻したり、負荷を変更したりしましたが、その都度残留雑音を測定しています。その測定値は、バラツキがあるものの、共通して、L-CHの方がR-CHより多めの残留雑音となっていました。

試作4号機では、評価ボード上の部品配置の都合から、ZDによる基準電圧を生成する回路部分は、R-CH側に実装して、L-CH側には長さ25cmほどの線で繋ぎました。R-CHは最短の距離で基準電圧をトランジスタに与え、LCH25cmと長い経路で与えています。L-CH側の残留雑音が多くなったのは、この25cmの経路が理由でしょうか?

確認のため、この基準電圧回路の実装をR-CH側からL-CH側に引っ越しする改造を行い、残留雑音を測定しました。

結果は、引っ越し前後での変化は無く、残留雑音は、L-CH側が多い状態のままでした。25cmくらいの延長配線は問題無いようです。

   

 

 


♪ 改造B:真空管とトランジスタを左右のCHで入れ替えたら

表題のとおり、50BM82SC1775A2SK117を、左右のCHで入れ替えて、入れ替え前後での残留雑音を測定しました。結果は、L-CH側が多い状態のままでした。

この左右のCHの残留雑音の差は、どこから来るのでしょうか? 尚、基準電圧生成回路は、L-CH側に実装してあります。

                                                                                                                                                                           

 


♪ 改造C560μFを試す

整流後のコンデンサーの容量は、お手本は250μFで、本機は220μFです。この220μF560μFに増量してみます。増量したことにより、B電源のリプル電圧が下がるので、残留雑音も低下すると思われますが、どうなるでしょうか?

 

コンデンサーを560μFに交換した結果、B電源のリプル電圧は0.66Vから0.27Vへ低下しましたが、残留雑音は若干の改善程度でした。

 

☞ 560μFに増量することで、整流ダイオードの突入電流が気になるので最初はスライダックを用いましたが、この程度の容量では大丈夫なようでした。(使用した整流ダイオードは、Vishay UF4007 IFSM 30A です。)また、クロストークが良化するのでは?と思いますが、測定はしていません。

 

                                                    


♪ 改造D:ヒータートランスを試す

成果が出ませんが、気を取り直して、さらにできることを実験してみます。

B電源のリプル電圧を半減以下にしてもSP端子間の残留雑音の改善がほとんど見られなかった理由は、素直に考えれば、B電源のリプル以外に雑音源がある、ということかと思います。リプル以外の雑音は、電源トランスから出力トランスへの誘導ハム、ヒーターに起因するハム、配線間の飛びつき、真空管への誘導ノイズ、、、、

と、知っている言葉を並べてみました。内容について聞かれると、困ってしまう知識レベルです。ということで、ぺるけさんの公開資料を改めて斜め読みしてみました。(これこれです。)

色々な要因があるんですね。このなかで、気になるのはヒーターに起因するハムです。

これまでの試作では、少々手を抜いて、50BM8のヒーター電源50Vは、2本直列にしてAC100Vから供給していました。このAC100Vから供給するときと、ヒータートランスから供給するときとで、残留雑音の変化はあるのでしょうか? トヨデンの100V/50Vのヒータートランスを追加して、ヒーターに供給してみました。

                                                                                                                               

 

改造の結果、雑音が下がりました。う・れ・し・い!

L-CHが劇的に下がって0.1mV以下です。お手本機に追いつきました。R-CHは若干改善して0.23mVです。推察するに、L-CHの残留雑音の主成分は、リプル・ノイズでは無く、ヒーター・ハムだったのかも知れません。

 

 

 


いい感じなので、このまま追加で実験することにしました。また、R-CH側が落ちないことも気になります。

 

♬ 改造D−実験A バイアスの値と与え方

先のヒータートランスを使ったケースでは、0V端子をアースに落としていますが、50V側の端子を使うこともできますし、また、バイアス値として、0V(アース)の他に62V(出力管V2のカソードに繋げる方法)もあります。

そこで、バイアスの与え方として、下図のa)f)までの形態を実験してみました。

a)は未接続、浮いている状態です。b)c)はバイアスが0V(アースに接続)、d)f)はバイアスが62VV2のカソードに接続)の形態です。 

 

     

  

 

実験の結果、次のように、バイアスを0V端子に与えるか50V端子に与えるかにより、残留雑音の大きさが、R-CHL-CHで逆転しました

また、バイアスの値(0V62V)やバイアスの供給元の違い(L-CH側カソードかR-CH側カソード)は、影響しない、となりました。

そして、未接続/浮いているときがベター? 

とにかく、悩ましい結果です。本番機は、どうしましょう。

 

 

Ø  バイアスの供給元の違い(L-CH側カソードかR-CH側カソード)は、影響なし

Ø  バイアス値の違い(0V62Vか)は、影響なし

Ø  未接続、浮いている状態も良い

Ø  0V端子側と50V端子側では、残留雑音は異なる

Ø  0V端子を使うと、L-CHが悪化し、50V端子を使うとR-CHが悪化する

Ø  何度か測定したが、値は同じか0.01mVの差。針は若干ふらつく(0.005mVくらい)ときがある

 

 


改造D−実験B 真空管を左右で入れ替えてみました。

実験の結果、雑音電圧の左右CHでの差異の理由は、真空管ではないという結果でした。また、バイアスを0V端子に与えるか50V端子に与えるかにより残留雑音は変化し、バイアスの値やバイアスの供給元(左右CHの違い)は、影響しないという特性結果で、これは実験Aと同じでした。

 

 


改造D−実験C 整流後コンデンサーを220μFから560μFに増加してみました。

現在の整流後のコンデンサーは220μFです。これを増量して560μFとしてみました。実験の結果、各ケースで、僅かに良化しました。

もともとL-CHは、残留ノイズが少なったので僅かの改善でも0.06V未接続のとき)となりました。

  

 

 


改造D−実験D バイアスを50V端子と0V端子の中間端子に与えてみました。

トヨデンの2次端子タップは、0V25V30V40V50Vです。今までは、この0V端子か50V端子にバイアスを与えましたが、この実験では、中間端子の25V端子、30V端子、40V端子にバイアス(0V)を与えてみました。ハム・バランサみたいな感じです。尚、コンデンサーは220μFに戻してあります。

実験した結果、25V端子に与えたときが、残留雑音の左右CHのバランスが最も取れていました。

 

     

 

 


改造D−実験E ヒーターの足を揃える

R-CHL-CHで足並みが揃わないことが気になります。

50BM8のヒーターの足は、4番ピンと5番ピンです。ヒータートランスからの接続は、左右のCHで揃えて0V端子をD番ピンへ、50V端子をC番ピンに接続させており、この点での差異は無いはずです、でした。

念のため、配線を確認したところ、R-CHがテレコの接続になっていました。あらら。。。

R-CH側のヒーターに接続する線を延長したときに間違えてしたようです。(2本同色の線を撚って使った。)

そこで、当初の予定通りに足を揃えてみました。その結果、両CHとも同じ傾向のカーブになりました。0V端子にバイアス(0V)を与えたときがベストです。

       

 

 

 PHILIPSの規格表を改めてチェックしたところ、左図のようにUCL82のヒーター構造はちょっと複雑です。何かここに秘密があるのかも知れない、と思ったのですが、使用しているPOLAMUCL82の中を覗いてみたところ、3極部のヒーターと5極部のヒーターが直列に接続されていて、左図とは異なりました。

 

 

 

 


改造D−実験F 真空管を入れ替える

実験Eの足を揃えた状態で、左右の真空管だけを入れ替えて測定してみたところ、R-CH側が良くない状態に変わりはありませんでした。

 

 


改造D−実験G 先にやっておけば良かった実験

最後ですが、電源トランスとヒータートランス、出力トランスのみの回路で、出力トランスの2次側端子間の電圧(電源トランスとヒータートランスからの誘導ハムの電圧)を測定しました。(ぺるけさんの「真空管アンプの素187頁〜)」に記載されている測定です)

 

試作機での電源トランスと出力トランスの配置は、トランスの間が10cm以上の空間がありますので、さほどの大きさでは無いと思っていました。

測定の結果は、測定値は0.07mVR-CH)、0.08VL-CHでした。(もう少し少ないと思っていました。)

試作機でのトランスの配置は、コアが水平に並ぶ配置です。そこで、参考として、出力トランスを寝かせてコアを直交させる配置にしたところ、両CHとも0.03mVとなり電源OFF状態と大差のない値でした。

試作1号機からコアの向きが直交するトランス配置にしておけば、もしかしたらもう少し違った結果が得られたかも知れません。

 

 

☞ この実験は、本番機のトランスの配置を決める際に、そもそも、どれだけの誘導ハム電圧なら許容できるかが分かっていなかったことに気がついて、試作機・試作ボートをバラバラに分解したあと、再度、トランスだけを組み上げて実施しました。トホホ。

☞ AC100Vのソケットの差し込みを逆にすると、ハム電圧が微量ですが5μVくらい変化しました。

 

 


未校正の測定器の値ではありますが、やっと、それも片側のCHだけでしたが、お手本機(改造2)の0.098mV(フィルター無し)に追いつくことができました。

恐るべし、ヒーター・ハム

左右CHでの差異の理由は不明のままですが、本番機ではどうなるでしょうか。

 

それにしてもドタバタしました。結論だけをシンプルに記述するつもりでしたが、自戒の意を込めて顛末を記録しました。 “試作機” ということで、きちんとした実装や確認を怠った結果、何をやっているのか分からなくなりました。痛かったです。

  

 


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