超3極管接続(Ver.1) 50BM8 シングル・アンプ

試作1号機 制作

Ver.01 2015/12/7

 

♪ 試作1号機の回路

下図が試作1号機の回路です。上條さんの回路のデッドコピーですが、差異としては、真空管は 6BM8 ではなく 50BM8としました。また、トランス類は入手が容易なトランスとしています。その他にマイナーな差異ですが、以下の3点があります。

・出力管V2のグリッドに発振防止用の抵抗330Ωを追加(宇多さんの「6BM8超三極管接続アンプの製作」を参考に追加しました)

・入力VR100KΩから50KΩに変更

・電解コンデンサーを250μFから220μFに変更(手持ちの関係です)

尚、試作機では、ヒータートランスを省略してAC100Vから取りました。

 

 

 

 


♪主要な部品

♬ 真空管

お手本の回路で使用している真空管は、6BM8です。今回は、6BM8の系列管でヒータ電圧が50V50BM8(UCL82)を使うことにします。子供のころ、50BM8が使われていた赤いポータブル・プレーヤでレコードを沢山聞きました。親しみを感じる真空管です。

  

  


♬ 電源トランス

お手本の電源回路では、タンゴのN-12を使用して、220V端子から整流後電圧282V(負荷電流71mA)を得ています。タンゴが廃業して久しく、N-12は入手が困難です。そこで、電源トランスは、東栄変成器のZT-03ESと、トヨデンのHT-5002を使用することにしました。

 

                                                                                                                                          


♬ ZT-03ESの整流後の出力特性

ZT-03ESは、1次端子と2次端子を逆に使うと、2次端子電圧が200V220V240Vになり、220V端子がそのまま使えそうです。しかし、1次端子と2次端子を逆に使うこと、また、容量的にあまり余裕のない使い方になることから、所要の電圧が確保できるか気になります。そこで、ZT-03ESの整流後の電圧値をあり合わせの抵抗器を組み合わせて測定しました。下記が測定回路で、ブリッジ整流後に100μFのコンデンサーを接続した回路です。470KΩはRxが無いときの放電用です。

  

 

下記グラフが測定結果です。縦軸がRxの両端子間電圧(整流後の電圧)で、横軸がRxの値から計算した直流電流です。

 

 

本機の消費電流は、出力段が35mA、初段が1mAなので、合計72mA程度です。72mAの消費電流のときは、220V端子では所要(お手本回路の整流後電圧)の282Vより18Vほど低くなり、240V端子では4Vほどですが高くなりそうです。

次にトランスの容量ですが、ZT-03ESの容量は30VAです。取り出せる直流電流の量を単純に『取り出せる直流電流=容量/端子電圧*0.63』で計算すると、220V端子で86A240V端子では79Aとなります。実際に240V端子で80mAほどの直流電流を1日流してみましたが、トランス本体の温度は、暖かくなる程度でした。(真冬なので室内はそれなりに寒い。)

 

この実験から、使用する2次端子は、240V端子としました。

 

 


♬ 出力トランス

お手本の回路では、タンゴのU-608を、一次側5KΩ、2次側4Ωの端子で使用し、8Ωのスピーカーを接続したときの1次側インピーダンスが10kΩになるように設計されています。また、出力段のカソード電流は、チャンネルあたりで35mA(〜40mA)ほどなので、1次側の巻き線に流す直流電流は35mA(〜40mA)未満です。

電源トランスと同様にこのタンゴのU-608の入手は困難なので、代替え品を探します。

「超三結」の魅力のひとつが小型トランスを使っても豊な低音が得られることのようなので、廉価な出力トランスの中から、出力インピーダンスと1次側許容直流電流により下記の製品を候補に挙げてみました。

T-1200ITS-2.5Wは同等品、ITS-2.5WSITS-2.5Wより広帯域ですが170KHzあたりに暴れがあるそうです。(ぺるけさんの「真空管アンプの素」より)

本来なら、回路の特徴や狙う音色とトランスの特性(インダクタンスとか高域の特性とか?)などから選ぶのでしょうけど、そこまでの選定スキルが無いので、唯一カバーケースに入っているという理由で「ITS-2.5WS」にしました。ネット通販で購入、送料は500円でした。

 

  

 


♪ 試作ボードによる制作

今回は、改造を前提とした制作になることから、ブレッドボードスタイルで試作してから、本番機を制作することにします。

下の写真がブレッドボードスタイルの試作用ボードです。

25cm*横40cm*厚さ2mmのアルミ板の上に、トランス類を配置し、抵抗やコンデンサー等の部品を2列に並べたネジ式端子盤台で固定、また、SW、ボリューム、真空管などの部品は、幅5cm*厚さ1mmのアルミ板を適当な長さで切り出して、これに固定して取り付けています。(この程度のアルミ板なら、カッターで何度かけがいて切れ目を入れてから、曲げ戻しを数回繰り返せばパキッと折れます。)真空管は、アルミ板にあけた穴の位置を間違えて、横向きになっちゃいました。マニュアルに「Opereating Posision・・・・any」とあったので、まぁ実験機ならいいかなと、、、

ベースのアルミ板の表面が白いのは、白色の表面保護シートを剥がさないで使っているためです。

配置は、配置の差が左右のチャネルでの特性の差に表れないよう、電源部を真ん中に、左右にそれぞれの増幅部、としました。

1日ほどで完成、なかなか具合がいいです。

   

使用上の注意点は、図のようにリード線を取り付けると、しっかり接続されず、不安定に接触・微妙に接触している状態になることです。実際に何度か経験しました。

ネジの閉め忘れにも注意。これも経験談です。

また、アルミ板の厚さは2mmですが、強度不足を感じます。補強が必要です。

真空管は立てたほうが良かったかな?

失敗は、入力VRを右に回すと音が小さくなることです。VRの端子の接続先には注意したはずでしたが。。。まぁ実験機、ということで直しませんでした。

端子台は、部品の取り付けが容易なようにと考えて、ボードから3cmほど浮かせました。このため、上からのテンションに弱くなり、力を入れてネジを回した際にバキッと2つに折れました!

   

 

 


 ♪ 電源ON

配線を終え、一息いれてから、目をつむって電源ON! 最初の電源投入はビクつきます。

50BM8のヒータがピカッと光り、ドッキとしました。。。。匂いや煙は無し。。。でも、なんかB電圧がおかしい。。。電源OFF

いろいろチェックしたところ、整流回路の電解コンデンサーのプラスとマイナスの極性が反転していました。以前にも今回と同様に極性を反転させたことがあります。このときは電解コンデンサーがパンクしました。(ホントに驚いた。) 上条さんの記事にも、“コンデンサーのリード線の極性については破裂することもあるので” と親切な注意書きがあったのに、同じミスの繰り返しで、メゲマス。

極性を反転させて誤使用してしまった電解コンデンサーは、再使用しない方が良いそうです。交換して、再度、電源ON50BM8のヒータがピカッと光るものの、各部の電圧は正常。一安心。

 


♪ 無信号時の電圧と調整

回路図に記入した電圧値は、無信号時の実測値で、上段がL-CH、下段がR-CHです。電圧値がフラフラする測定ポイントが多くて時間がかかりました。各測定値は、数分間での最大値と最小値の平均値です。

ð  我が家の商用100Vは、97Vから103Vくらいの間をふらふら変動しています。また、数分間の平均的な値をとっても100Vを下回るときも上回るときもあります。今回は101.5Vでした。また、炬燵の上で制作していますが、炬燵のSWを入れると電圧が1.5Vも下がってしまう環境です。

こんな環境ですが、B電圧は、事前の電源トランスの実験結果のとおりで、お手本機の電圧値に近い値となりました。他の箇所もお手本機に近い値が得られました。

 

調整は、上條さんの記事の指示通りに、電源投入前に最大値にしておいたVR2を回して、出力管V2のカソード電圧を70Vにしました。ただし、なかなか70Vになりません。何度もトライしたのですが、結局、L-CHは諦めることにしました。

☞   上條さんの記事には、『電源変動などで出力管の電流が多少変動し、調整点の電圧がふらつきます。場合によっては±5V程度ふらつきますが実用上は問題ありません。』とあります。

☞ その後、測定したり改造したりするたびにVR2を回しました。(VR2の耐久性が心配になるほど!?) 慣れなのか、少し上手くなって概ね69V71V程度に収めています。と言っても電圧値は、時間とともに変わってしまうのですが。

☞ 後で気がついたのですが、プレート電圧の方が安定していますので、カソード電圧が70Vとなるプレート電圧を求めて、プレート電圧をその値にする方が調整は容易です。

  

 


♪ 出力管V2プレート電流の測定

出力管V2のプレート電流(正確には帰還管V1のプレート電流との合算値)を、出力トランスITS-2.5WS1次側端子間の電圧と直流抵抗から求めましたが、どうも値が変です。

そこで、ITS-2.5WS1次側端子間の直流抵抗の値を、未稼働のときと、稼働直後(24時間通電し電源OFF1分ほど)のときで、それぞれ、測定してみたところ、275Ωと298Ωとなり、20Ωほどの差があることが分かりました。発熱により、抵抗値が大きくなったと思われます。

出力管V2のプレート電流の値は、測定用の抵抗をシリーズに挿入してその端子間の電圧から求める方が良さそうです。

尚、調べたところ、温度による抵抗の変化は、割と簡単に計算できることが分かりました。銅の抵抗の温度係数(20度)は、0.00396だそうです。計算すると、稼働中のトランスの温度は20度ほどアップしていると推定されます。

 

 


♪ トラブルとヒアリング

音が聞きたくて、このままの状態でスピーカーを接続しました。

電源を投入して、しばらくしたら、スピーカーからブーンというかなり大きな音が出ました。びっくりしました。数秒間は出ていました。電源OFF、このときも、ブーンという音が出ました。

何かの接続間違いかと思ったのですが、問題のある接続箇所は見つかりません。両方のCHから出ます。何度やっても出ます。色々な方の作例をwebで拝見したのですが、このような現象についての記載が無く、途方にくれました。一度出てしまえば後は電源を切るまでは問題が無く、とても良い音でした。

原因を調べるため、電源ONOFFのときの出力管のプレート電圧やカソード電圧、また、その他の部位の電圧の変化を観察したり、また、シミュレーションをしたりと時間をかけましたが、分かりません。そして、電源ONOFFを何度も繰り返すうちに、L-CH3極管部のプレート電流がほとんど流れない状態となってしまいました。壊れた!?

新たな50BM8(ポーランド製のUCL82)を2本入手して差したところ、相変わらずヒータがピカッと光るものの、この “ブーン” は、跡形もなく消えてしまいました! RCA製の50BM8でしたが、外れだったようです。この間、約1ヶ月。

 

新たな50BM8UCL82)でPCオーディオを楽しむ日々が続きました。

音の印象を文章にできるほどの文才は無いのですが、大勢の方が制作して楽しんでおられる理由が分かった気がします。制作を中断しようかとも思ったのですが、壊れてくれたおかげで、放棄せずにすみました。良かったぁ。

   

 


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