先に P-G 帰還を施した真空管を仮想的な三極管と見なし、その三定数から P-G 帰還回路の増幅率を求めました。また、プレート電圧を出発点として回路解析を行い入力インピーダンスを求めました。
ここでは、手法を変えて、等価回路から、P-G 帰還回路の増幅率や入力インピーダンスを求めてみます。 同じ結果になるはずですが、、、
図 1 が解析対象となる P-G 帰還回路です。三定数から増幅率を求めた際の増幅回路と同じ回路です。
図 2 が図 1 の等価回路で、直流電源、コンデンサーはショート、真空管の等価回路は、五極管の場合は電流モデルが良いそうですが、電流モデルは扱いにちょっと不慣れなので電圧モデルとしました。また、ベース五極管の増幅率を μ 、内部抵抗を rp としています。
<等価回路のシンプル化>
等価回路は、できるだけ素子数を減らして回路をシンプルにすると解析が容易となるそうです。
そこで、図 3 に示すように、内部抵抗 rp と負荷 RL をテプナンの定理により出力インピーダンス Zo に合成し、図 2 から図 4 へ等価回路をシンプル化させました。
当初は、図 2 の等価回路 1 であれこれ考えたのですが、複雑で手こずりました。図 4 の等価回路 2 へ変換できたことで、ようやく増幅率他を導き出せました。
等価回路2 から、グリッド励賑電圧 Eg を入力信号 Ein と出力信号 Eo で表すと、
この式@ は、プレート特性図を描く際に得た式 A と同じ式でした。
次に、出力信号 Eo をグリッド励賑電圧 Eg と力信号 Ein で表すと
出力信号電圧である式 A を解釈してみると
Q 第 1 項は、図 1 では負帰還抵抗 (Rs、Rf) もプレート負荷となるため、負帰還抵抗 (Rs、Rf) が無い場合の出力電圧 (−A * Eg ) が、( Rs+Rf ) /( Rs+Rf+Zo ) 倍に目減りしている、ということを意味していると思います。
Q 第 2 項は、図 1 で入力信号電流の流れを辿ると、負帰還抵抗 (Rs、Rf) を経由して負荷抵抗 RL と真空管 Vb 内を流れ、入力に戻るルートを辿っています。このため、入力信号が、直接出力電圧 ( Zo/(Rs+Rf+Zo) * Ein ) としてプレートに現れる。この電圧は入力と同相であり、結果的に出力が下がる。ということを意味していると思います。
式A に式@ を代入すると
式B を変形 (#1) すると
従い、P-G 帰還回路の増幅率 Af =−Eo/Ein は、
となりました。(注:通常の増幅率と同様に絶対値で表しています)
あたりまえと言ってしまえばそれまででですが、式D の 増幅率 Af は、仮想三極管 (P-G 帰還) の増幅率 μf を表す等価式 E における内部抵抗 rp を Zo に、増幅率 μ を A に置き換えた形になっています。
ついでに、グリッドまでの増幅率 Aig と、グリッドからプレートまでの増幅率 Agp を求めます。
等価回路 2 から、Eo を、Eg と (−A * Eg ) で表すと、
従い、グリッドからプレートまでの増幅率 Agp は、
式B、式Cから、グリッドまでの増幅率 Aig は、
となりした。
出力インピーダンスは、入力をショートさせた状態で出力側から交流電圧を印加し、流れる電流値と印加した交流電圧により算出できるそうです。
出力インピーダンス=印加電圧/流れる電流、
等価回路 2 で、入力をショートし出力部から交流電圧 Ea を印加してみました。 この回路が、図5 です。
出力側に印加した交流電圧 Ea が Rf と Rs により分圧されます。分圧され Rs の両端に生じた電圧を Ega としています。この Ega はグリッドに印加され−A 倍に増幅されます。
負帰還抵抗を流れる電流 I1 、また Zo 側を流れる電流を I2 とすると
H 式は、意味が取り難いですが、変形 (#2) をすると
さらに、別な変形 (#3) をすると、
となります。
どちらも判りやすい式となりました。
式I を回路の成り立ち(順番)的に解釈すると、
負帰還により内部抵抗が rp / (1+μ * β) となった Vbに、Rs+Rf、及び、RL を、負荷とした。
式J を回路の成り立ち(順番)的に解釈すると
負荷 RL が接続された Vb に負帰還をかけ、次いで、Rs+Rf を負荷として追加した。
メモ : ゲインA倍、出力インピーダンス Zo の増幅回路に帰還率 β の負帰還を施した場合、出力インピーダンスは
入力インピーダンス
等価回路 2 によれば、グリッド電圧 Eg から見て右側の Zo の先には Eg の−A 倍の電圧が生じています。この場合、Rf と Zo は 1/(A+1) 倍となりグランドに落ちる回路と見なせます。
従い、入力 Ein 側から見て、図6の右側の回路全体の抵抗が入力インピーダンスを表すので、各抵抗値を単純に加算すれば入力インピーダンスとなります。
等価回路から増幅率他を求めました。結果は、三定数から導き出した式と同じでした。また、入力インピーダンスもプレート電圧の増分から順を追って導き出した式と同じ結果となりました。
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図 1 のP-G帰還を施した増幅回路の
μ は、Vb の増幅率 rp は、Vb の増幅率と内部抵抗 |
変形(#1)の過程
変形(#2)の過程
変形(#3)の過程
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