P-G 帰還回路の入力インピーダンス

負帰還抵抗 RsRf が無い通常の増幅回路では、入力信号電流はグリッド抵抗を流れるだけなので、入力インピーダンスは、グリッド抵抗のみです。P-G 帰還回路では、入力信号電流はグリッド抵抗以外に負帰還抵抗 RsRf にも流れます。従い、P-G 帰還を施すと、P-G 帰還前より入力インピーダンスは低下します。

P-G帰還の入力信号電流経路.PNG

 

このあたりを、ぺるけさんが負帰還その3 (その種類と実装のポイント)にて、明快に解説されています。

プレートに現れた電圧変化を出発点として、順を辿って入力インピーダンスを求めていきます。非常に判りやすい解説です。

以下ぺるけさんの解説を勉強のため書き写して整理し、数式化してみました。

 

前提                                 入力インピーダンスの計算.PNG

²  グリッド抵抗は省略

²  増幅率 Ap=−EpEg で、値は 10

²  Rf1100MΩ

²  Rs100KΩ

 

 

 

 

 

 

 

では、解析スタート

1

入力電圧 Ein を変化させたところ出力電圧 Ep 100V 上昇した

2

増幅率 Ap 10 倍なので、グリッド電圧 Eg は−10V(=−100V/10倍) 増加したはずである。

3

帰還抵抗 Rf の両端電圧 ERf は、110V (100V(10V))上昇したはずである

4

帰還抵抗 Rf に流れる電流 If は、0.1mA (=110V1100KΩ) 上昇したはずである。

5

帰還抵抗 Rsにも同じ電流 If が流れるので Rs の両端電圧 ERs は、10V(0.1mA*100KΩ)上昇したはずである

6

入力電圧 Ein は−20V (=10V10V) 増加したはずである

7

入力電圧 Ein が−20V 増加して流れる電流が 0.1mA 少なくなったので、入力インピーダンス Zin 200KΩ= (20V/−0.1mA) のはずである

 

以上から、

Ap P-G帰還回路のグリッド-プレート間の増幅率=−プレート電圧/グリッド電圧

グリッド抵抗は無しとしています。

となりました。

 


Ap A

入力インピーダンスは、Ap RsRf から求めるられることが判りました。

ところが、実際に入力インピーダンスを計算しようとして、ちょっと悩みました。Ap の値です。

Ap はグリッドからプレートまでの増幅率 (グリッド信号電圧*Ap =プレート信号電圧) でありましたが、下記の右図のように負帰還抵抗にはプレート電流が流れるため、Ap は、左図の通常の回路の増幅率 AZo * gm よりは小さいはずです。

実際の設計では、どの程度の値としらた良いのでしょうか?

3.4 増幅率の低下.PNG

 

そこで、ベースの真空管と負荷 RL の部分を、出力信号を Eo、出力インピーダンスを Zo として、等価回路で書き直してみたのが下の回路図です。この等価回路図を使って、Ap A の関係をぺるけさんの手法を真似て求めてみました。(真似ては見ましたが、ぺるけさんのようにスマートにはいきません。)

ポイントは、Rf Zo の大きさの比を N 倍とおいたところです。

3.4 増幅率Apと増幅率Aの関係.PNG

 

では、解析スタート

1

Rf は、出力インピーダンス Zo 100 倍の大きさだったとします。

2

出力インピーダンス Zo と負帰還抵抗 Rf を流れる電流は等しいので、Zo の両端電圧は、Rf の両端電圧の 100 分の 1 となる。

3

Rf の両端電圧は 110V 上昇したので、Zo の両端電圧は−1.1V 上昇したはず。

4

出力信号電圧 Eo は、プレート電圧が 100V 上昇したので、101.1V=100V1.1V 上昇したはず。

5

グリッド電圧は−10V の増加だったので、増幅率 A は、10.11 倍=−(101.1V/10V)

6

一方、Ap はグリッドから見たプレート電圧の増幅率で 10 倍だった。

7

従い、Ap A 10/10.11 倍となる。

 

以上から、P-G 帰還回路のグリッド-プレート間の増幅率 Ap と通常の回路の増幅率 A の関係は、シンプルな関係にあると判明しました。

ここで@式の第 2 項にこの Ap A の関係式を代入すると、

従い、

となりました。もやもや解消です。

 


Ap A の差異

負帰還抵抗 Rf の大きさと、Ap A の差異を計算してみました。その結果、

差異は A の大きさにはあまり左右されない

Rf 通常回路の出力インピーダンス Zo 50 倍あれば差異は 2 % ほど、100 倍あれば 1% ほどに納まる。

 


入力インピーダンスの低下程度

P-G 帰還回路では、負帰還抵抗が入力抵抗として働くので、入力インピーダンスは低下し、前段には重い負荷となるわけですが、具体的に、A = 19.4 倍、Zo = 1.76K Ω、グリッド抵抗を 470K Ω として、負帰還抵抗 Rf の大きさを振らせてどの程度のインピーダンス値になるか、計算して見ました。

@ Rf = 500K Ω、例 A Rf=1M Ω、例 B Rf4M Ω です。

470KΩ だった入力インピーダンスは、例えば、β =0.09 のとき、Rf=500KΩ、1MΩ、4MΩで、それぞれ、64KΩ、113KΩ、263KΩ まで低下しました。

感覚的には、P-G帰還では入力インピーダンスは、50KΩ〜100KΩに低下、でしょうか。

 


参考webページ

*  ぺるけさん 「負帰還その3 (その種類と実装のポイント)

 


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