P-G 帰還の特徴

 

仮想三極管 P-G 帰還) の三定数を求めるその過程の中で、仮想三極管、言いかえると P-G 帰還、の特徴について言える事柄がいくつか見えました。ここで整理しておきます。

 


特徴1 帰還率 β は、β = Rs / ( Rs+Rf )

負帰還の振る舞いを表す重要な指数として、どのくらいの量の出力信号を入力側に戻すかを示す 帰還率 があります。帰還率は通常 β で表すようで、本資料でも同じ記号 β を使います。

1 の仮想三極管 P-G 帰還) の場合、この帰還率 β はどのくらいの量になるのでしょうか? 答えは、先の仮想三極管 P-G 帰還) の三定数を求めたなかにありました。

仮想三極管 P-G 帰還) の内部抵抗 rpf を測定した過程で、

入力電圧を一定として、プレート電圧をEp 増加させると、負帰還抵抗 Rs の両端電圧が上昇することにより、グリッド電圧が同じく上昇、その値は、

となりました。

従い、図1 の仮想三極管 P-G 帰還) 帰還率 β は、β Rs / ( Rs+Rf )  となります。

 


特徴2 入力信号が ( 1β ) 倍に減衰する

仮想三極管(P-G帰還)の相互コンダクタンスgmf を測定した過程で、

プレート電圧を一定として、入力電圧をEinだけ増加させると、グリッド電圧が上昇し、その増加量は、負帰還抵抗RSRfにより分圧された値となりました。

従い、図1 仮想三極管 P-G 帰還) では、入力信号の全てがグリッドに印加されず、負帰還抵抗で (1β) 倍に分圧 (減衰) される、という特徴があります。これは、P-K 帰還などと異なり P-G 帰還固有の特徴のようです。

 


特徴3 入力インピーダンスが低下する/直接入力信号が出力に表れる

仮想三極管 P-G 帰還) では、グリッド−プレートと間に負帰還抵抗 RsRf が接続されていますので、この RsRf を経由して出力端であるプレートに入力信号が流れていきます。このため、負帰還抵抗が無いベース管だけの場合の入力インピーダンスは無限大ですが、仮想三極管 P-G 帰還) の入力インピーダンスは有限値となります。流れる入力信号電流の大きさは負帰還抵抗の大きさに依存するので、負帰還抵抗が小さいほど、入力インピーダンスは小さくなります。

別項で、検討しましたが、プレートに負荷を与えた仮想三極管 P-G 帰還) の入力インピーダンス Zinf は、グリッド抵抗除くと、

です。

ここで、rpgm はベース管の三定数、RL は仮想三極管 P-G 帰還) のプレート負荷です。

 


特徴4 負帰還抵抗、グリッド抵抗、前段の出力インピーダンスがプレート負荷になる

特徴3で見たように、仮想三極管 P-G 帰還) では、負帰還抵抗 RsRf により、プレートとグリッド間に信号電流が流れます。出力側から見れば、プレートに表れた出力電流が負帰還抵抗を経由してグランドに流れていきます。

これは負帰還抵抗がプレート負荷になるということです。

 

負帰還抵抗がプレート負荷になるということは P-G 帰還固有の特徴では無く、抵抗 1 本で出力トランスの二次側からカソードに戻す負帰還回路の場合も同様ですよね。ただし、P-G 帰還では、図 5 から明らかなようにグリッド抵抗もプレート負荷になりますし、前段の出力インピーダンスもプレート負荷抵抗になります。この点は、P-G 帰還固有の特徴かと思います。

 


いいんでしょうか

特徴1の解析では、まず、「Epを変化させた」としました。増幅回路として考えると、入力を与えないまま出力を変化させており、回路動作の順番的に、いいんでしょうか? 

 

いいんです。(たぶん、、、図1は増幅素子であり、増幅回路ではありません。だから、増幅の順番は気にしないでいい、、、たぶん、、私はここで結悩みました、、、)

 

では、増幅回路で検討してみます。図6が、プレートに負荷抵抗RLを与えた増幅回路です。カソード抵抗やカソードコンデンサー、グリッド抵抗は省略しています。

 

この回路で、入力 Ein Ein だけ増加させたとき、プレート電圧がEo 増加したとします。

式@ から、特徴1、2が同時に明らかとなりました。

¬  特徴1 帰還率 β は、β = Rs / ( Rs+Rf )

¬  特徴2 入力信号が 1β 倍に減衰する

 


まとめ

仮想三極管、言いかえると P-G 帰還、の特徴は、

¬  特徴1 帰還率 β は、β = Rs / ( Rs+Rf )

¬  特徴2 入力信号が 1β 倍に減衰する

¬  特徴3 入力インピーダンスが低下する/直接入力信号が出力に表れる

¬  特徴4 負帰還抵抗、グリッド抵抗、前段の出力インピーダンスがプレート負荷になる

 

また、視点を変えて、2 本の抵抗 Rs Rf の作用は、

¬  特徴1 負帰還を施す、その帰還率β は、β = Rs / ( Rs+Rf )

¬  特徴2 入力信号を( 1β 倍に減衰させる

¬  特徴3 入力インピーダンスを低下させる/直接入力信号をプレートに流す

¬  特徴4 自身プレート負荷になり、グリッド抵抗、前段の出力インピーダンスもプレート負荷とする

 

たった 2 本の抵抗ですが、様々な作用をするものです。

 

 


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